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消防職員のための法令用語解説

 

借地借家法 (六)

 

一四 借家に関する規定

借地借家法で、従前の借家法で設けられている制度に加えて、借家に関する新しい制度が設けられた。それらについて、次に解説する。

 

一五 転勤中などの期間だけの建物貸借

借地借家法で三八条一項は、転勤中などの期間だけの建物借地借家に関して「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物を一定の期間自己の生活の本拠として使用することが困難であり、かつ、その期間の経過後はその本拠として使用することとなることが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、その一定の期間を確定して建物の賃貸借の期間とする場合に限り、第三〇条の規定(筆者注、借地借家法の建物賃貸借契約の更新等に関する規定は強行規定で、これらの規定に反する契約は効力を有しないとする条文)にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二九条の規定(筆者注、期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。」と規定する。

これは、転勤中の建物の活用を図るため等に設けられたものである。

この特約は、書面によってしなけれぱならない(同条二項)。

 

一六 取壊し予定の建物賃貸借

借地借家法三九条一項は、取壊し予定の建物の賃貸借に関して、「法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三〇条(筆者注、建物賃貸借契約の更新等の強行規定の条文)の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。」と規定する。取り壊し予定建物について、その活用と取壊し時に紛争が生ずることのないように、この契約ができることを定めたものである。

建物の敷地が土地収用法による収用、土地区画整理法による区画整理等により、建物の取壊しが明らかな場合が、法令により建物取壊しの明らかな場合の例である。

契約により取壊しが明らかな場合としては、定期借地権、事業用借地権にもとづいて建てられている建物について期間が満了して借地権が消滅する場合等が、あげられる。

これらの契約も、取壊し事由を記載した書面によってしなければならない(同条二項)。

 

一七 借地法の適用

「借家法」のもとで生じた効力は、そのまま維持される(借地借家法附則四条但書)。

従って、借地借家法施行の日である平成四年八月一日より前からの借家契約で、そのまま契約が引続いているものは、「借家法」が適用される条文があるので注意を要する。

特に、「この法律の施行前にされた建物の賃貸借契約の更新の拒絶の通知及び解約の申入れに関しては、なお従前の例による。」との規定がある(借地借家法附則一二条)。

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

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