(二) 古酸を含むトライオイルの影響
残留TNTと炭酸ソーダが長時間加熱され、反応が起こり易くなった状態のところへ、古酸を含むトライオイルが混入したことにより、結晶槽内では比重の重い古酸が反応混合物と接触した結果、局部的に発熱反応が進行し、残留TNT及びトライオイルの分解開始温度に達したと考えられる。
(三) 爆発に至った直接原因
局部的に残留TNT及びトライオイルの発熱反応が始まり、次第に温度が上昇して発炎し、爆発に至ったと考えられる。
四 活動概要
一四時二六分「ド・ドーン」と、地震とも思える大音響がしたため、通信指令課が情報収集をしていた矢先、一四時二八分非常通報により爆発火災を受信、二署から指揮隊二隊、消防隊七隊、救急隊一隊が出動した。
管轄署から北方約七kmの地点にもかかわらず、出動時すでに上空黒煙が確認できるほどの大爆発であった。
消防隊が工場南門に現場到着した時、工場敷地内全域を黒煙が覆い継続的に小爆発が発生していた。
現場には爆発性危険物の施設が点在しており、二次爆発の危険性が十分あると判断し、警戒区域を設定するとともに、上空から消防ヘリの情報等をもとに、関係機関と協議し約四時間後、工場敷地内の安全確認実施後、消火活動を行った。
五 今後の課題
本爆発火災は負傷者が出たものの、死者がいなかったことは幸いであったが、消火活動等時期の判断を誤れば、二次爆発により大惨事に発展する可能性があり、事故後事業所に対し次の事項を指導した。
(一) 消防活動体制の確保(警防課)
・ 進入路の確保
・ 連結送水管の設置及び海水部署位置の確保
・ 消防訓練の実施
(二) 火薬施設の安全対策(予防課)
・ 緊急措置装置の設置及び作動訓練
・ 避難壕及び防爆壁の設置
・ 予防規程の制定及び保安監督のチェックを励行
・ 年間を通じての安全教育の実施
・ 各工室に非常警報設備の設置
(三) 情報連絡体制の強化
・ 関係機関との連絡協議会の設置
・ 緊急連絡体制の確保
おわりに
水爆発火災については、今後の防ぎょ活動に多くの教訓を残した事例であり、早急な警防計画等の策定が重要であるとともに、今後も継続して関係機関相互連絡協議会及び関係機関合同の総合防災訓練を定期的に実施することが必要である。
事故の再発防止策は法律に基づき指導・取締りはできるが、最終的には事業所の自主保安レベルの向上が今後最も重要であると考えられる。
(木坂 武)