火災
製造所爆発火災
江能広域消防本部(広島)
はじめに
当消防本部は、広島県の南東に位置し、瀬戸内海に浮かぶ風光明媚な島しょ部三島からなる地域で東は呉市、北は広島市、西は名勝安芸の国宮島に相対し、音戸大橋で呉市と結ばれている。
また、消防本部所在地の江田島町には、明治二一年(一八八八年)世界の三大兵学校の一つとして旧海軍兵学校が開校、その後終戦期に海上自衛隊第一術科学校として現在に至っている。
当管内は六町で構成された事務組合で、面積一七三・八一km2、人口約五九、○○○人、一本部・二署・二出張所、職員一一九人体制で住民の安全を守っている。
また、管内には石油コンビナート等特別防災区域、米軍秋月弾薬廠、火薬製造所等の施設が島内各地区に点在しており、今回紹介する火災は、TNT火薬製造中に発生した爆発火災である。
一 火災概況
(一) 出火日時
平成八年一一月一九日(火) 一四時一八分頃
(二) 出火場所
広島県安芸郡江田島町小用
(三) 覚知時刻
一九日 一四時二八分
(四) 鎮火時刻
二〇日 一〇時〇五分
(五) 気象状況天候晴れ、風向北北東、風速三・八m/s、気温十二・九℃、乾燥注意報発令中
(六) 負傷者
重症二名、軽傷六名
(七) 被害状況
全壊四〇棟(内全焼四棟) 半壊一四棟(内半焼二棟) 一部破損六五棟(内部分焼一棟) 山林等四〇・六アール
(八) 損害額
約八億四千七百万円
(九) 原因
TNT製造作業において、三次硝化を終了したトライオイル(TNT製造過程のオイル)がトリガーとなり結晶槽内で異常反応が発生し、爆発に至った。
(中国化薬(株)江田島工場TNT硝化工室事故調査委員会調査結果)
二 出動車及び人員
(一) 一九日
消防本部(署)・消防団 車両一八台、九七人
応援機関
ヘリ五機(広島市消防周一・大阪市消防局一・広島県防災ヘリ一・広島県警二)、船舶八隻(呉・広島海上保安庁六・広島市消防局二)、車両五四台、三〇七人
(二) 二〇日
消防本部(署)・消防団車両一三台、五二人
応援機関
ヘリ二機(広島県防災ヘリ一・広島県警一)、車両一四台、九七人
三 爆発に至った経過
(一) 残留TNTと炭酸ソーダ水溶液の混触結晶槽内の残留TNTと作業中に混入された二〇%炭酸ソーダ水溶液が、槽内温度一〇〇度以上の温度で四時間加熱され続けたことにより、炭酸ソーダ水溶液の水分が蒸発するとともにTNTとの間で混触が進行し、混合物の分解開始温度を下げたものと考えられる。