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損落下物で埋もれていたりすることが多い。このため、立会人に建物などの出火前の状況を説明させて、実態を把握してから見分や発掘を行うのが通例であるが、「立会人の説明内容」と「調査員の見分事実」とは明確に区別して記載する。

4] 実況見分調書の記載事項

通常実況見分の場所は、火災現場及びその付近となる。見分対象は、その場所にある焼損又は水損した建物など全ての物件である。

しかし、火災現場では見分できず、物件を署所において鑑識を行った場合には、場所は署所となり、物件は鑑識をおこなった物件そのものとなる。

(六) 質問調書

1] 質問調書の作成目的

火災調査では、焼損物件の見分、すなわち物証を主体として出火原因などを明らかにするのが原則である。

しかし、火災において焼損した物件は、出火前の状況を止めておらず、出火につながる事象を証明する物件が焼失してしまうことがある。また、常識では考えられない誤った使用形態が原因で出火する火災もある。このような火災では、関係者しか知りえない、出火前における機器の異常や、日常の便用方法を把握する必要があり、また、客観的な妥当性を得る上からも、関係者からの証言の録取は不可欠である。

質問調書に記載された発見者などの証言は、実況見分調書に記載された事実の補完資料として扱われる。

2] 質問調書の作成者

現場調査に携わり、その火災で録取すべき要点を十分に理解している職員があたる。

3] 質問調書の作成上の留意事項

録取事項が証拠としての存在価値を有するためには、関係者の供述が「任意」に行われたものでなければならない。任意性を担保するためには、書類作成上証言者に対して次のような手続きを踏まなければならない。

・ 録取内容を確認させる

・ 署名を求める

また、一八歳未満の少年、精神障害者等に対して質問を行う場合は、親権者等の立会人を置かなければならず、署名は双方に求める。

質問調書は、関係者の証言を記録したものであるが、証言した言葉の全てを記録する必要はない。無駄な言葉や意味のない言葉は省略し、要点が証言者の言葉で記録されていればよい。

4] 質問調書の作成対象者

作成対象者は火災の態様を見て決めるが、特に、製造物からの火災の場合、発見者の目撃情報で、「火煙が出ていた位置が、製造物本体か」どうかが争点になることがあるので、詳細な聴取が必要である。

特異な使用形態はなかったか。取扱説明書・使用上の警告表示の認識があったかどうかなども聴取しておく。なお、このような場合は、現場質問調書を避けて質問調書を作成し、内容を関係者に確認させて署名を得ておくこと。

 

おわりに

火災調査結果については、司法機関及び捜査機関等からの文書照会等の対応も年々増加している。加えて平成七年には製造物責任法が施行され、火災調査書類の開示請求、製品の安全性向上に対する要請も増える中、「公平・中立の立場」で詳細に記録されている火災調査書類に対する社会の期待は大きく、火災調査の重要性が高まっている。

消防機関は、今まで以上に火災調査の重要性を認識するとともに、科学的な原因究明に配意し、火災調査から得られた情報については、プライバシーの保護等に十分配慮しながら、適切な管理のもとに積極的な活用を図る必要がある。

 

 

 

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