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原則的には、隊員を指揮しながら大局的に火災の状況を把握している最先到着隊の隊長を作成者とするのが妥当である。しかし、他の隊員しか見分していない事実があれば、その者が本調書を作成することになる。

3] 火災出場時における見分調書の記載事項

見分は、火災を覚知し出場する時点から始まる。したがって、本調書の内容は、出場途上から消防活動終了時点までに見分した事実となる。本調書では、見分内容を一般的に次の三項目に分けて記載している。

ア 出場途上における見分

本項は、火災を覚知した消防隊が、現場に向かう途上に見分した状況を記載する。

内容を具体的に記載することによって、延焼拡大中の火災であったか、屋根が燃え抜けていたか、風向きはどうであったか、燃焼物が危険物等であったかなど、初期における火災の概況が把握できる。

イ 現場到着時における見分

本項は、現場到着時に見分した状況を記載する。

この見分内容は消火の対象である「建物」と避難・救助などの対象である「関係者」との二通りに分けられる。初期の建物の見分は「出火建物の判定」等に、関係者に関する見分は「出火原因の判定」等につながるので、本調書の中で重要な部分である。

ウ 消防活動中における見分

本項は、消防隊の活動開始時点から鎮火までの間に見分した事実を記載するものである。

(五) 実況見分調書

1] 実況見分調書の作成目的

本調書は、出火原因判定等の基礎資料とすることにあり、他に、その調査の状況、すなわち火災現場の発掘作業や復元作業の状況を克明に記録した文書であり、証拠保存資料でもある。

「出火建物判定」等を行う場合、実況見分調書に記載された「事実」は、判定根拠の主体として扱われる。

2] 実況見分調書の作成者

調査現場で自らが直接見分した事実を記載するものである。作成者は実況見分を行った者に限られる。大規模な建物火災などで、実況見分を分担して実施した場合は、それぞれが担当した場所の実況見分調書を作成することとなる。

3] 実況見分調書作成上の留意事項

実況見分は、消防法第三四条の立ち入り調査権に基づいて行われるものであり、権限を有する相手方の承諾を得て、その立会いのもとに行われる任意の調査である。このため、見分時の立会人及び見分の開始と終了時間は必ず記入する。また実況見分が数日間にわたった場合は、日を単位として「第○回」として作成する。

実況見分調書は、火災現場の発掘・復元終了時までの状態を火災原因判定等の資料として、また、証拠保存資料として記録しておくものである。

ア 見分事実の客観的な記載

主観的判断や見分者の意図する結論に誘導するような記載方法は避けなければならない。実況見分者の意思や判断を入れずに、現場の状況や焼損状況等を客観的、かつ、ありのままに表現する。

イ 便用禁止の用語

「出火建物」、「出火箇所」、「発火源」等の用語は使用できない。これらは、火災現場を発掘・復元した結果に、検討や主観的判断を加えて導き出されるものであり、「火災原因判定書」に使用する用語である。

ウ 関係者の立会いとその証言

調査を実施する場合は、公平性・中立性の担保として必ず立会人を置かなければならない。

調査現場では、建物が焼損して原型を止めていなかったり、出火建物が焼

 

 

 

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