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実」を主体とし、火災出場時の見分調書及び質問調書の証言事項等をその事実の補完資料として所要の検討を加えて結論を導き出す論理展開とする。

イ 判定結果と矛盾する証言の取扱い関係者の証言の中には、「出火建物の判定」等の結果と矛盾がみられる場合がある。実務上このような証言は、調査現場で信憑性の検討がなされており、判定書作成時には矛盾が生じない証言だけを列挙して、判定根拠としてしまうことがある。

しかし、調査現場の検討で否定された証言内容についても、判定書の中に採り上げ、結論を導く過程で反証を挙げながら否定しておかなければならない。このような証言に言及しない一方的な論述は、都合の悪い証言の内容を意図的に回避したような印象を与えてしまう。判定結果と矛盾する証言だからこそ、その証言に対する記述が必要なのである。

4] 火災原因判定書の記載事項

ア 出火建物の判定

焼損建物が二棟以上ある場合、どの建物から出火したのか、すなわち出火建物はどれかについて判定し、記載する。焼損した建物が一棟の場合や、数棟焼損しているが一見して出火建物が明らかなときは、敢えて記載する必要はない。ただし、このような場合は「出火箇所の判定」の冒頭に出火建物について簡記しておく。

イ 出火箇所の判定

焼損棟数に関係なく、必ず記載しなければならない。

出火箇所というと「極めて限定されたある範囲」と解釈されがちであるが、その範囲は火災の規模や焼損状況などによって異なる。全焼火災などでは「六畳間南西隅付近」といった幅を持った範囲となる場合が多い。

出火箇所の範囲を狭めるほど発火源が限定され、出火原因の追求は容易になる。

ウ 出火原因の判定

出火原因は、

・ 発火源と着火物

・ 発火源から可燃物への着火経過と延焼経路

・ 出火に至る人的・物的な誘因

などに考察を加えて究明する。

出火原因を判定する場合、最も重要なことは「事実の認定は証拠による」ということである。つまり、調査現場で発火源としての「物証」を見つけ出し、その状況を記載した実況見分調書の中から具体的な証拠を挙げ、関係者の証言などを参考にしながら立証していくことである。

火災個々の特徴により、立証の困難性に大きな差があるが、いかなる場合でも焼損状況を主体にした立証を行う必要がある。

また、詳細に発火源の立証が記載されていても、出火箇所に存在する他の発火源についての記載がない場合、正しい判定とは言えない。他の火源から出火した可能性を否定(反証)しておき、疑問の余地を残さない必要がある。

(四) 火災出場時における見分調査

1] 火災出場時における見分調書の作成目的

消防隊が消防活動中に見分した結果を記録し、火災原因判定所の資料とすることである。実況見分調書に記載された事実の傍証として扱われるが、消防職員が見分した事実であることから、関係者の証言を記載した質問調書よりも高い資料価値を有している。

火災現場に到着し、延焼建物や延焼範囲を冷静に判断した消防隊員の情報が貴重な判断資料となる。また、出火に関係した当事者は、初期の段階では真実を話すことが多いので、この情報も「出火原因の判定」等に重要である。

2] 火災出場時における見分調書の作成者

火災に出場した消防隊員が実際に見分した延焼状況や、関係者から得た情報を、自ら記載したものでなければならない。火災に出場した消防隊員であれば、職位、職種に関係なく、基本的には全てのものが該当する。

 

 

 

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