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なお、現場において出火原因を判定するに至らない場合及び意見が一致しない場合には、無理に原因を決定せず、矛盾等をさらに調査・解明することとして、その後に出火原因を決定する。

(十) 関係者への説明

現場調査を実施した消防、警察機関の調査結果であることを明らかにして、関係者へ当日の調査結果の概要を出火範囲内の復元状況を対象にしながら、建物構造材・建具・家具等の焼損状況から、出火箇所の燃え広がりについて説明する。

 

表2 火災調査書類の構成例

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二 調査書作成時の留意点

(一) 火災調査書類の構成及びその様式

火災調査の目的は、現場調査執行の後、その結論を表した「火災調査書類」が作成されて始めて達成しうるものである。火災調査書類は消防法に基づく調査執行の結果としての法的な性格を有するものであるから、努めて全国的に統一した基本的な様式にする必要がある。このことから、基本的な様式が昭和五九年三月全国消防長会火災調査研究会で定められ、消防庁予防課長通知(平成七年六月五日)として示された。

書類の構成については表2のとおりであるが、ここでは、火災原因判定書、火災出場時における見分調書、実況見分調書、質問調書に限って説明する。

(二) 火災調査書類作成上の留意事項

火災一件を処理するのに多くの異なった様式の書類が作成される。各様式にはそれぞれ作成目的があり、求められる文章表現や、作成者などが必ずしも一致しない。

実況見分調書では「客観的」な文書作成。火災原因判定書では「主観的」な文章作成が必要であり、両者は正反対の性格を有している。また関係者の証言内容は質問調書として記録し、署名を求めているが、この内容を実況見分調書の見分内容と併記して質問調書を省略してしまうと、任意性と証拠価値が損なわれた書類となる。

逆に、各様式ごとに独立させることにより、様式に応じた「書類作成の分担」などができ、事務の簡素化・迅速化等のメリットが生じる。

実況見分調書の中に、焼損物件を現場から離れ、時間・場所を別にして詳しく見分した結果を記録するものとして、「鑑識見分書」を定めている。

質問調書では、現場でのみ質問したときや、その後、何らかの理由により正規の質問調書が取れなくなった場合などは、「現場質問調書」として作成する。

(三) 火災原因判定書

1] 火災原因判定書の作成目的

「焼損物件」を見分し、究明した事実と関係者の証言とを資料とし、消防機関が最終結論に至った論理構成や考察・判断を記録することにあり、火災調査の中核をなすものである。

2] 火災原因判定書の作成者

火災現場で調査した事実などを資料として、それらに「論理的考察」を加えて作成するものである。したがって、作成者は調査現場に臨み、出火原因判定などにつながる要点を見分していること。また、火災事象に対し論理的考察ができる消防的知識・経験が豊富な者が妥当であり、発生した火災に内在する事後の問題を見据えて選ぶべきである。このようなことから、判定書の作成は「調査を指揮した上位の者」を充てるのが最も適切である。

3] 火災原因判定書作成上の留意事項

ア 判定に至る論理構成

判定に至る論理構成は、焼損状況を客観的に記載した実況見分調書の「事

 

 

 

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