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ワンポイント 消防職員のための法令用語解説

 

借地借家法 (四)

 

七 既存の借地について、借地借家法が適用になる事項(続)

 

(四) 賃借権譲渡又は転貸の許可

借地権譲渡の許可について、借地借家法一九条一項は、次のとおり、規定する。

「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。」

借地権の譲渡、転貸については、民法六一二条第一項の規定により、地主の承諾がなければできないことになっており、それに違反すれば、契約解除の原因となる。

しかし、地主が承諾をしないと、借地権の活用が図れない。そこで、裁判所の許可をえて、借地権の譲渡、転貸を認めてもらう制度になっている。この場合に、承諾料を、裁判所が定めることができることになっている。

この借地借家法一九条一項の規定は、既存の借地関係にも適用される。

そして裁判所は、この裁判をするに際し、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。(借地借家法一九条二項)。この借地権の譲渡、転貸に関して、裁判所が定める期間内に、地主が、自ら譲渡、転貸を受ける旨を申立てたときは、裁判所は、相当の対価及び転貸の条件を定めて、それを命ずることとなる(借地借家法一九条三項)。

裁判所は、特に必要がないと認められる場合を除いて、これらの裁判をするに際し、鑑定委員会の意見を聞かなければならない(借地借家法一九条六項)。

 

(五) 借地権の新地主に対する対抗力

借地借家法一〇条一項の規定により、「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」。

この規定は、旧「建物保護ニ関スル法律」一条に定められていたが、借地借家法の成立により、「建物保護二関する法律」は廃止となり、借地借家法一〇条一項が適用されることとなったものである。

 

(六) 借地権が更新されなかったときの建物買取請求権

借地借家法一三条一項は、次のとおり規定する。

「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる」。

これは、建物買取請求権の規定で、借地法四条二項の規定を口語化したものである。

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

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