(四) 後続消防隊の活動
現場付近の水利状況は、地下式消火栓が半径一八〇m以内に四基(三基は同系列一〇〇mm配管)と出火建物東側(約二〇〇m)に四〇t防火水槽二基があり、条件としては良い地域である。最先着隊の防御戦術の態様を無線で傍受しながら、火点東側の水槽に部署し現場到着すると同時に、火点北側及び東側の住宅への攻勢防御活動と火点への直接注水を行い、火勢の制圧を図り他の後続隊と共に注水活動を実施する。
(五) 部隊活動の総評
建物規模と出火時間帯及び延焼内容を考えてみて隣接建物への類焼が最小限に防御できたことは各隊の活動内容が概ね良好であったためと思料する。
三 今後の課題
本火災は、発生時間帯から考え、幸いにも死傷者がいなかった。火災防御活動の検討を実施した結果は
(一) 火災発生時間帯を考慮し、現場活動隊員への安全管理の無線指示があった。
(二) 先着小隊長からの現場状況第一・二報が具体的かつ的確情報が得られた。
(三) 出火現場状況等から同系列配管への部署を考慮し、発生現場到着する間に戦術等検討必要があった。
(四) 水圧低下を伴う転戦部隊と後続部隊とが、敏速な連携活動判断により被害を最小限度に止めた。
(五) 先着ポンプ隊の筒先が出火建物敷地内西側から進入するも、火炎炎上のため北側への転戦が不可能と判断し後続隊に任してしまった。
おわりに
本件の火災原因は、従業員のタバコの不始末と推定されるが、作業終了から数時間経過後に出火した火災である。出火推定時刻が二時〇四分頃と市民が寝静まっている時間帯で、火災の第一発見者が北側の住宅二階で就寝中の市民であり、南側窓ごしの異常音で目が覚め、隣の作業場が真っ赤に燃えていたので自宅の電話で一一九番通報した。作業場の内容物が建具関係の小割りが一・二階に作業場狭しと立て掛けてあり、また二階部分に畳が二〇枚程積んであり、出火場所が二階東側の床部分であったことなどから考えて、大火になるまで誰も気が付かなかった。出火時間帯及び発生場所が住宅密集地内の火災にもかかわらず死傷者が出なかったのは、出火建物が作業場であったことと、建物構造上外壁の内側が真壁であったため延焼速度が押さえられたためである。三時○○分の風向が北東・風速三・七mと出火建物南西側空地に向かって吹いていたこと、また、消防隊の包囲戦術活動が的確であったことなど、総合的に判断して焼損面積を最小限に止めた規模であった。時間経過と共に各隊現場縮小し、管内分隊と担当分団で残火・完全鎮火活動を実施するも建物内容物から長期の時間を要し、最終部隊が現場を引き揚げて帰署すると、八時三〇分交替の職員からの出迎えを受けた。
(田广 邦夫)