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火災

住宅密集地での建物火災

和歌山市消防局(和歌山)

 

はじめに

和歌山市は和歌山県西北部にあり、市の北部を東西に流れる紀ノ川河口地帯に形成された扇形の平野に位置し、徳川御三家・紀州徳川五五万五千石和歌山城の城下町として発展した。昭和二〇年七月の戦災により、一夜にして市の中心部の六八%が壊滅したが、意欲的な復興とともに昭和三〇年から隣接一四か町村を合併して京阪神経済圏との密接な結びをもち、製鋼を主産業として発達、現在では県人口の約三六%を占める地方中心都市としての形態が整えられ、さきの阪神・淡路大震災を教訓として防災行政担当部が市の行政から消防に移管され「子供からお年寄りまでのすべての市民が安心して暮らせる都市」をめざしている。和歌山市の消防体制は消防周(総務・予防・警防・防災の各課及び指令室)消防署五・出張所六・消防職員三八八人、消防団一団四二分団、一、七五〇人で管内三九〇、七〇〇余人の生命・身体・財産の保護と複雑多様化する各種災害に対処している。ここに紹介する火災事例は、住宅密集地で発生した建物火災で出場から帰署まで五時間を要した火災である。

 

一 火災の概要

(一) 発生日時 平成九年一二月二三日(火) 二時〇四分頃

(二) 発生場所 和歌山市加納

(三) 覚知時刻 午前二時〇九分

(四) 鎮火時刻 午前四時○○分

(五) 気象状況

天候曇り 気温七・七℃ 湿度五七% 風向北東三・七m

(六) 死傷者 なし

(七) 損害状況

建具作業場一・住宅一・プレハブ事務所一全焼、住宅一半焼、住宅五部分焼 焼損面積四一四m2

(八) 損害額 二六、一五四、〇〇〇円

(九) 原因 タバコによるものと推定

(一〇) 出動状況

車両 ポンプ隊七台・救助隊一台・指揮車等二台

人員 消防職員四〇人・団員二一人

 

二 活動概要

(一) 出場途上における状況

直近消防署から現場までの距離は二kmで、出場途上現場方向を見ると夜空が明るく火炎上昇を確認、第二出動を要請した。先着ポンプ隊は出火建物西側一五〇m付近の公設消火栓に水利部署。

(二) 現場到着時の状況

出火建物は木造二階建て、屋根はスレート瓦葺き、外壁は板張りの約一三〇m2程度の総二階建て建具作業場で、二階の全ての窓(東西南北)から炎が吹き出し二階の屋根が倒壊寸前で、一階は窓越しに二階からの燃焼内容物が一階へ落下し、一階部分が延焼拡大中で、その状況はまるで焼却炉内の内容物が延焼している様相であった。また、出火建物北面に隣接(約二m)する住宅の南側二階に延焼中であった。

(三) 最先着消防隊の活動

小隊長は関係者から、逃げ遅れ及び負傷者等なしの情報を得ると同時に、第二出動部隊に出火建物北側及び東側への筒先延焼阻止の指示を与えた。先着ポンプ隊は出火建物西側及び南側への二線放水を実施するも後続隊との同系列配管部署による水圧低下が発生、各後続隊には防火水槽部署を指示するも火災の勢いは衰えることもなく益々延焼し、輻射熱により隣接建物への延焼危険が大で、東側建物屋根及び南側約五mの空地を挟んで住宅四棟の外壁付近の付属品が熔融し始めた。

 

 

 

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