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電線の被覆が破損し、a点とb点が短絡した場合、短絡電流Iは、電気回路の抵抗がほとんどゼロになるので、非常に大きな電流が流れて火花が出たり、そのまま流れ続けると電線が燃えたり変圧器が損傷する。流れる電流の大きさは、電線の太さや、変圧器の大きさ、変圧器から短絡箇所までの距離などによって決まる。通常、短絡した場合は過電流遮断器(ヒューズやブレーカー)で遮断される。(図11参照)

 

図-11 短絡

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五 電気火災の防止対策

(一) 感電災害の防止の例

電路や電気機械器具を正しい状態で使用し、保守、点検などを励行し、漏電そのものを生じさせないことが何よりも重要であるが、万一漏電した場合でも、感電災害を生じさせない方法としては次のような対策がある。

1] 保護具、防具の使用

活線(充電した電路のこと)作業や高圧活線接近作業を実施する際に、万一充電部に触れても、人体に電流が流れないように保護したり、人体が充電部に触れることを防護する装備として、絶縁用保護具と絶縁用防具とがある。

絶縁用保護具とは、電気用ゴム手袋、電気用安全帽などのように充電電路の取扱い、その他電気工事の作業を行うときに、作業者の身体に着用する感電防止のための保護具をいう。絶縁用防具とは電気用絶縁管、電気用絶縁シートなどのように充電電路の取扱い、その他電気工事の作業を行うときに、充電部分に取り付ける感電防止用の装具をいう。

2] 漏電遮断器の使用

漏電遮断器とは、これが設置された以降の電路および電気機器で起こる漏電に対して、漏れ電流がある値以上であれば、その電路を自動的に、かつ瞬時に開放し、感電災害を未然に防ぐ安全装置である。

漏電による感電災害の防止対策として、現在ではこの方法がもっとも優れていると考えられて、労働安全衛生規則の第三三三条においても、漏電による感電災害の多い移動式および可般式の電動機械器具が使用される電路には、感電防止用の漏電遮断器を設置することを義務付けている。

漏電遮断器は、感電の防止や電気機器の保護の目的にも使用されるため、現在、いろいろな性能を有したものが製作されている。JIS C 8371(漏電遮断器)によれば、漏電遮断器の性能として定格感度電流と動作時間の違いによって表3のような種類がある。感電防止用の漏電遮断器とは、一般に、高感度高速形のものが該当する。(表3参照)

 

表-3 漏電遮断器の種類

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[備考] 漏電遮断器の最小動作電流は、一般的に定格感度電流の50%以上の値となっているので、選定には注意すること。

 

適切な漏電遮断器を取り付けたとしても、それ自体が故障をしていては、なんにもならないのでときどきの点検が必要となる。(点検方法は、テストボタンを押してブレーカーが切れるかを確認する。)

3] 保護接地の実施

電気機械器具の金属製ケースを十分に低い接地低抗値で接地して、漏電時に電気機械器具の金属ケースに生ずる対地電圧を低く抑えて、感電災害を防止しようとする方法である。保護接地は、電気機器の金属製外箱を接地することにより、人体の接触電圧を許容値以下に抑制するものである。(表4参照)

 

表-4 接触電圧の制限

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接地の目的には、感電災害などを防止するための保護目的の接地と、電路や電気機器の破損などを防止するための機能上必要な接地とがある。

接地工事には四種類あり、A種接地工事、B種接地工事、C種接地工事、D種接地工事とがある。A種接地工事は、高圧用の変圧器、油入遮断器などの外箱や避雷器などに施されるものである。B種

 

 

 

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