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の電界に人(作業者など)がさらされると、静電誘導によって人体が帯電される。このとき人体の一部が鉄塔や接地された機器の外箱に触れると、人体に蓄積された誘電電荷が大地に放電され電撃を受ける。また、送電線下に大地から絶縁された物体(例えば自動車)が、この電界にさらされると静電誘導によって帯電される。このとき大地に立つ人が物体にふれると、誘導電荷が人を介して大地に放電され電撃を受ける。静電誘導による電撃は、一般に軽く、直接人体に重大な災害を与えることはほとんどないが、ショックによって高所からの墜落災害や転倒災害の原因になることがある。また、心理的に恐怖感をいだかせるため超高圧電線での作業などにおいては、この問題は一層重要である。(図9参照)

 

図-9 静電誘導による感電災害のメカニズム

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C1: 送電線と人体間の静電容量

C2: 人体と大地間の静電容量

RE: 人体と大地との接触抵抗

R0: 人体の対地絶縁抵抗

E: 送電線の対地電圧

V: 静電誘導電圧

(a) 人体に帯電

 

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C1: 送電線と物体間の静電容量

C2: 物質と大地間の静電容量

RM: 人体抵抗

RE: 人体と大地の接触抵抗

R0: 物体の対地絶縁抵抗

E: 送電線の対地電圧

V: 静電誘導電圧

(b) 物体に帯電

 

b 電磁誘導

電磁誘導が災害に関係するのは、例えば送電中の電線が誘起導体となり、これと接近平行する架空地線、電線、工事用ワイヤ、工事用電話線などの被誘導体に誘導電圧が発生する場合がある。工事中の電磁誘導による災害を防止するには、架空地線・停電回路の接地、機械・工具の接地、工事用電話線の接地などを確実に行うことが必要である。

(二) 電気火災のメカニズムの例

1] 漏電(地絡)

現在の低圧電路の配電方式は、変圧器の低圧側の中性点または一端子を接地(B種接地工事)しているため、電線や電気機械器具の絶縁部分が損傷あるいは老朽して、その絶縁効力が失われると、電流は正規の電気回路以外に、絶縁効力の失われた箇所から大地にも流れる。この現象を漏電といい、大地に流れる電流を漏れ電流あるいは地絡電流という。(図10参照)

 

図-10 漏電(地絡)

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メタルラス張りの壁を電話が貫通する場合に貫通部分で絶縁破壊がおきた場合に、メタルラスに漏れ電流が流れ火災になる恐れがある。

2] 短絡

短絡とは、故障や取扱いミスなどによって、電気回路の線間が電気抵抗の非常に少ない状態、またはまったくゼロの状態で接触する事故現象である。この場合には異常に大きな電流が流れ、これを短絡電流という。すなわち、図11において、正常時は、電動機に流れる電流は、変圧器二次巻線の一端から電線および電動機巻線、変圧器二次巻線を通り、変圧器二次巻線の他端に戻り、その電流はI=V/Rアンペアである。しかし、故障などで

 

 

 

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