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本宮町消防本部(和歌山)

 

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本宮町は、全国に三、〇〇〇以上もある熊野神社の総本社、熊野本宮大杜の門前町として開けてきた所であり、熊野本宮大社は熊野三所権現の信仰の地として、上皇や法皇、庶民に至るまで数多くの参詣があり、その様子は"蟻の熊野詣"にたとえられたほどである。

本宮町は、東牟婁郡の北部に位置し、北に果無山脈、南に大塔山系と山岳で囲まれた平均標高四〇〇mの山間地で、古い歴史を有する湯峰・川湯の両温泉及び最近開発された渡瀬温泉があり、吉野熊野国立公園の雄大な自然景観とあいまって情緒豊かな《史跡と温泉と自然美の町》として脚光を浴びている。

消防本部は昭和五四年四月に発足し、現在一本部・一署、二一人の職員と五分団一二七人の消防団員が、管内面積二〇四・〇六km2、人口四、三〇〇余人の安全を日夜見守っている。

 

・ 交替制全員、救急II課程修了

管内に診療所が二か所しかなく、救急搬送の九〇%が、三〇分以上かかる新宮市他の病院へ収容している状況にある。

当本部では、消防長以下三人の日勤者を除く、交替制一八人全員が救急II課程を修了し、さらに、救急救命士が三人勤務しており、救急業務の高度化を図るとともに訓練に励み、救急技術の向上を目指している。

 

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また、救急救命士の実地研修を東京消防庁に依頼し、平成九年度は二人派遣した。

 

・ 衛星携帯電話で高度救命処置

当町は山間部に位置しており、救急無線や携帯電話の地上波が届かない地域があるため、平成八年四月に高規格救急自動車の運用を開始した際、自動車設置型衛星携帯電話を導入し、消防本部への報告、医療機関の医師との高度救命処置に関する指示・連絡等に活用している。

 

・ やすらぎペンダントの設置

和歌山県内の五〇市町村のうち当町は六五歳以上の高齢者の割合が七番目に高く、約一、四〇〇余人が居住していることから、独居老人宅等に災害弱者緊急通報装置(やすらぎペンダント)を平成三年度から設置している。この装置には、通常のペンダントの他、差動式と定温式の火災センサー二個が設けられており、急病や火災等の緊急時に幅広く対応できるようになっている。

 

・ 消防団との強固な連携体制

当町管内は、林野面積が全体の九二%、一八八・三km2におよび、山が深い状況にあるなか、渓流釣りや沢登りなどで山に入り遭難する事故が、年に数件発生している。

このような遭難事故で最も頼りになるのが、山仕事を生業とする消防団員で、消防署員と強固な連携体制を組み、的確に発見・救出活動を行っている。

 

・ 熊野古道地水利調査

平成一一年四月二九日から九月一九日まで、当町周辺で開催される「南紀熊野体験博」のイベントの一つとして「一〇万人の熊野詣」が行われる。このイベントには、多数の人出が予想され、たばこの不始末等による火災や急病人等の救急事象が発生する確率が高くなることから、本年の三月二二日に消防署員・団員四〇数人が参加し、調査を実施した。

調査内容は、熊野古道の中辺路ルート・赤木越ルート・小雲取越ルートの地理及び水利、無線の通信状況、主要箇所までの所要時間などである。

 

・ 精強な消防部隊を育成

辻坂消防長は「いざという時に失敗しないよう、普段から研修・訓練に励み、精強な消防部隊を育成したい。」と力強く語られた。

(加藤正美)

 

 

 

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