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海外消防情報

 

インドネシアの森林火災

 

一九九七年にインドネシアの森林火災により発生した煙霧は、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン及びパプアニューギニアに広がって太陽を覆い隠して人々の健康を害し、これが全世界の重大ニュースとなった。

インドネシアでは火災により多くの森林財産が失われており、一九九七年までに発生した森林火災による損害は、約三二億ドルに達するという。同国では、高齢者から幼児に至るまで二〇〇万以上の人々が森林火災の煙霧により直接的又は間接的に被害を受けている。スマトラでは空気中に浮遊する煙の粒子が健康に有害な限界の一二倍となり、酸性雨が降った。そして、煙霧により農作物の生産と給水が減少し、数百人が死亡した。

また、マラッカ海峡のオイルタンカー事故、ムシ川のジェットフォイル、タンカー及びスピードボートの事故及びスマトラ南部のトラック事故は全て煙霧によって引き起こされたものであると考えられている。更に、火災によりカリマンタンのオランウータン、スマトラの象及び虎等各地で多くの野性動物や魚が死亡している。このような火災は、主に油ヤシ、ゴム等の農園を作るための焼畑農耕により発生している。

困難な地形の地域に消防隊が出動する場合には、現場に到着するまでに一時間半から二時間もかかってしまう。特に奥地の森林では古木が倒れたり、折れた枝や枯れ葉が地上に幾層にも積み重なっており、火災の温度は一、〇〇〇度以上にも上昇し、炎と黒煙は、二〇から二五メートルの高さにも達している。このような火災は、通常薮や草地の所に来るまで燃えるに任せる場合もあり、被害を一層大きくしている。消防隊員は、火災前方約二〇メートルの所をブルドーザーで切り開いて幅七、八メートルの防火帯を作ったり、水路を作って川から水を送って延焼防止に努めている。

しかし、しばしば消火用の水不足は深刻な問題であり、消防隊員が給水のために川の所に行くと、そこには数匹の虎が水を飲んでいたという事例もある。

また、遠隔地域では道路下の泥炭が燃えていて、消防車、ブルドーザー、トラクター、トラック等の重量のある車両は道路が沈下してしまうので使用することができない状態である。

火災により森林が大規模に失われているのは、主に次の原因によるものである。

1] 消防隊員は、泥炭火災の消火技術及び訓練が不足している。

2] 消防機器、消防隊員の個人装備、通信機器、輸送車両等が不足している。

3] 燃焼区域が余りにも広い上に、地形が荒々しい。

(ファイアインターナショナル一九九八年三月号)

(文責 大野 春雄)

 

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