ワンポイント
消防職員のための法令用語解説
借地借家法 (三)
七 既存の借地について、借地借家法が適用になる事項
既存の借地関係については、「借地法」が原則として適用されることは、前述のとおりである。しかし、既存の借地関係について、「借地借家法」が適用される条項がある。それは、次のとおりである。
(一) 借地条件変更の許可
借地条件変更の許可について、借地借家法七条一項は、次のとおり、規定する。
「建物の種類・構造・規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。」
これは、例えば、既存の堅固な建物でない建物を目的とする借地権を、堅固な建物を目的とする借地権に変更する場合に、当事者間に協議が調わないときの裁判所による借地条件変更の許可について定めた規定である。この規定は、従前の借地関係についても、適用になる。
(二) 建物増改築の許可
無断増改築禁止特例がある借地権に関して、増改築許可について、借地借家法一七条二項は、次のとおり規定する。
「増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」
無断増改築禁止の特例も、一つの借地条件だが、これについても、裁判所の許可によって、借地権設定者である地主の承諾に代えることができる。借地借家法のこの条文も、既存の借地関係に適用される。
(三) 借地条件変更許可の裁判の手続き
借地条件変更許可の手続きは、次のとおり。
「裁判所は、前二項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。」(借地借家法一七条三項)。
「裁判所は、前三項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない」(同法一七条四項)。
「転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第一項から第三項までの裁判をすることができる。」(同法一七条五項)。
「裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項から第三項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない」(同法一七条六項)。
従前の借地法八条の二第三項から第六項までを口語化したにすぎないが、これらの規定も、既存の借地関係に適用される。
全消会顧問弁護士 木下 健治