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平成九年度消防に関する論文 最優秀作品

石綿セメントけい酸カルシウム板の爆裂現象について

神戸市消防局 桂 敏美

 

はじめに

 

次々と建築される高層ビルやインテリジェントビル群、こうした建築材料の分野においても、耐火性、耐震性、そして軽量化が進められ、数々の進歩を重ねています。

特に、石綿セメント板やけい酸カルシウム板は、軽量で強度も高く、耐水性で伸縮の少ない、断熱性に優れた不燃材料であり、しかも施工が容易で工期が短縮できて経済的であるため、内装材や外装材として広く使用されています。

ところが、平成七年一月に発生した阪神・淡路大震災で全壊した消防署を使用して火災実験及び消火訓練を行ったところ、外装材として使用されていた「石綿セメントけい酸カルシウム板」が炎に煽られて爆裂を起こし、周囲に激しく飛散するという特異な現象が見受けられました。

そこで、この消防署の外壁に使用されていた石綿セメントけい酸カルシウム板で発生した爆裂現象について検討します。

 

一 石綿セメントけい酸カルシウム板とは

 

けい酸源と石灰との水熱反応でできるけい酸カルシウム水和物と石綿からなる軽量成形材で、耐火建築材、断熱材等の建築資材として広く使用されており、その製造方法は、JIS規格によると、石綿、石灰質原料及びけい酸質原料、その他の原料に適量の水を加えて混合成形後、オートクレーブ養成を行い、乾燥して製造したものを言います。

 

二 全壊した消防署の状況について

 

この建物は、昭和五六年に建設された鉄筋コンクリート造四階建延一、六四四m2で、外壁はマスチックローラー工法「A」、一部外装石綿セメントけい酸カルシウム板が使用されており、この石綿セメントけい酸カルシウム板には、下張として五mmのフレキシブル板が張られていました。

※ フレキシブル板とは、石綿セメント板の一種で、セメントと石綿の混合比によってフレキシブル板、平板、軟質板に分類されるが、このうちフレキシブル板は最も多くの石綿が配合され、高圧で加圧成形されるので強い強度と弾力性があり、加工性に優れたものである。

内壁は、車庫、事務室、待機室、食堂等用途によって、コンクリート打放し部分、モルタル壁、石膏ボード等の使い分けがされていました。

 

 

 

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