第3節 ウォームアップとクールダウン(ウォームダウン)
ウォームアップは、これから始まる試合や練習に備えて、心身を準備することであり、その目的を大別すると、「パフォーマンスの向上」と「障害の予防」の2点になる。またパフォーマンスの向上といっても、試合と練習では異なってくる。試合では本番で自己の能力を最大限に発揮するためであり、練習ではこれから始まる技術練習や体力トレーニングを効率良くこなすためである。当然試合と練習ではウォームアップの時間も内容も変わってくる。
1 一般的ウォームアップと専門的(専門種目)ウォームアップ
ウォームアップは、空手道の動作や技を含んでいない「一般的ウォームアップ」と、逆にそれらを含んだ「専門的(専門種目)ウォームアップ」とに分けることができよう。普通は、まず一般的ウォームアップによって、体をある程度ほぐして、専門的ウォームアップに入っていく。
一般的ウォームアップは障害の予防を目的としてストレッチ、柔軟体操、徒手体操などが広く行われている。これらの3つの運動は体温の上昇を促すといった生理的な側面に加えて、柔軟性の向上といった運動機能の側面も持っている。
一方専門的ウォームアップとしては、技術的・心理的な準備、それに空手道で必要とされる運動機能の準備などが行われる。
2 練習を効率的に行うためのウォームアップ
空手道の練習では、一般的ウォームアップの後の専門的ウォームアップは省略され、基本や移動基本が形・組手のウォームアップとなっているようである。そこで形・組手の練習の前にそれぞれの専門的ウォームアップを行うことを提案したい。それらは、大会の試合前に行うウォーミングアップに近いものになるはずである。普段の練習で、試合のウォームアップをいかに行うかを指導するのに良い機会でもある。
3 クールダウン(ウォームダウン)の目的
クールダウンの目的としては疲労回復と障害の予防が考えられる。激しい運動によって体内に乳酸という疲労物質が蓄積されるが、クールダウンはこの乳酸の除去を促進する効果がある。また精神的緊張を和らげる効果もある。
休憩に入る時も、すぐ正座をさせるのではなく、軽く動かしてクールダウンさせてからの方が良いだろう。同様に、正座からすぐ練習を再開するのでなく、脚の屈伸などを行ってから始めさせるようにする。
4 一般的クールダウンと専門的クールダウン(ウォームダウン)
クールダウンもウォームアップと同様に、一般的と専門的に分けることができる。一般的クールダウンとしては、ウォームアップと同様にストレッチング、柔軟体操、徒手体操を、一方専門的クールダウンとしては、シャドウ組手や形などをリラックスして行えば良いだろう。特に専門的クールダウンは軽視されがちであるが、疲労回復の観点からいえば、いま試合で使用した筋肉をほぐすことになるので非常に有効である。クールダウンの順序としては、ウォームアップとは逆に、まず専門的クールダウンによって軽く流したあとに、ストレッチングなどの一般的クールダウンを行うようにする。