第4章 地域スポーツとしての空手道
地域スポーツ指導者の指導の対象はさまざまであるが、小学生を対象とした指導は、生涯スポーツへの入り口として、大変重要である。また地域スポーツの場では、異学年集団の形成も容易にできるため、児童の精神的発達に合わせた指導をすることができる。
指導内容に関しては、小学生の学習内容と大きな違いはない。空手道に親しみ、身体を動かすことの楽しさを理解できるような指導を心掛けたい。
ここでは、地域で行われているスポーツ指導(道場)について、学校教育との違いを示しながら指導の留意点を記す。
第1節 地域空手道指導の実態
伝統芸道の伝承は、古くは口伝のみの「一子相伝」であり、それは師範の家を道場として、そこで行われていた。以後、広く空手道が普及していく際も、学校教育のなかではなくそれぞれの地域にある道場において指導されてきた。現在においても、空手道の普及の中心は地域社会(道場)にあるといえる。
文部省は、学校週5日制の実施に伴う子供たちの学校外自由時間の増大や、学校運動部活動の停滞など子供たちをとりまく生活環境やスポーツ環境が変貌しつつある今、生涯スポーツ振興の方法として、空手道のように地域で行われるスポーツ指導活動を推進している。そのひとつに財団法人日本体育協会によって運営されている「スポーツ少年団」がある。
スポーツ少年団として登録している全国の総数は、34,298団(669,750名)で、そのうち空手道の登録団数は1,521団(29,867名)である。これは、野球やサッカーなどに続いて7番目の登録数である(平成9年度資料より)。しかし、スポーツ少年団に登録していない団体や道場は、これ以上に多数あると推測される。
全国にある道場の確実な総数は把握されてはいないが、各流派や地域などの特色を持ちながら、特に小学生の空手道を学ぶ場所として重要な位置を占めていることは確かである。