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第1章 空手道の特性とねらい

 

第1節 武道・スポーツとしての空手道

 

平成10年の教育課程審議会の答申に盛り込まれた教育課程の基準の改善のうち、小学校学習指導要領「体育」では、自ら運動する意欲を培い、生涯にわたって積極的に運動に親しむ資質や能力を育成するとともに、基盤的な体力を高めることを重視する。このため、児童の発達段階に応じて、運動を一層選択して履修できるようにすることや、体力の向上を図る上で内容を重点化するなどの改善を図る。また、児童の体力などの現状を踏まえ、心と体をより一体としてとらえる観点から、自分の体に気付き、体調を整えるような内容を盛り込むことが示されました。そして地域や学校の実態に応じて多様な運動も指導することができるようにする、としています。

武道を学校における教育の内容として取り扱っていくことは、誠に有意義なことであります。空手道は、調和のとれた身体的発達が期待できる上に、「礼」と「節」を重んじる伝統的行動を通して、道徳的精神を培うことのできる武道であります。“空手に先手なし”という空手道固有の考え方、行動の仕方がこのことを示しています。空手道は、歴史的には徒手空拳をもって身を護る武術として発生した。空手道がスポーツ的要素を加味して競技として普及振興したのは比較的新しく、今日では正義を重んじ、平和を愛する精神を基本としている。

 

1 武道と日本人

 

今日、世界の人々の間で多くのスポーツが行われている。それらのスポーツでは、そのスポーツが発祥した国の人々の「ものの考え方」や「行動の仕方」が、そのスポーツの規則やマナーとして大切にされている。例えば、ラグビーでは試合終了をノーサイドと称し、試合が終われば敵も味方もないとする考え方などは、英国人の「ものの考え方」や「行動の仕方」の表れといえる。同様に、日本人の「ものの考え方」や「行動の仕方」が内在している運動として武道をあげることができる。

我が国の伝統的な運動文化である武道を、学校における教育の内容として重視していくことは、我が国の文化や伝統を尊重する観点はもとより、これからの国際化社会の急激な進展に呼応し、世界に生きる日本人を育成していく立場からも有意義なことである。

 

 

 

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