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平成7年兵庫県南部地震の震源域は差し渡し40-50km、深さ方向に15km位である(断層面の長さ40-50km、幅15kmとも言う)。その面積は対馬程度である。兵庫県南部地震では、明石海峡の地下14kmから破壊が始まって、神戸側と淡路側に破壊が広がっていった。破壊域が広がるのにおよそ10秒ほどしかかかっていない。岩盤のずれの量は1-2mであった。ごく短い瞬間に莫大なエネルギーが出るのが地震という現象である。

震源域の大きさを表す目安としてマグニチュード(以下M)が使われている。地震の観測が始まって以来、日本の陸域で起こった浅い地震のMは最大8.0で、これは明治24(1891)年の濃尾地震の際に記録された。この地震の震源域は美濃と尾張、すなわち岐阜県と愛知県にまたがり、そのさしわたしは約80kmであった。平成7(1995)年に阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震は、M7.2で、兵庫県南部の名称が示すとおり、その震源域は兵庫県南部におさまっている。さらにMが一つ小さい地震(M6程度)では、震源域は市町村におさまる程度に小さい。陸域で起こる地震の震源域は、M8で複数の県にまたがり、M7で一つの県内におさまり、M6で市町村におさまるというのが、目安である。ただ、被害地域はこれより一周り大きい。地震の名称は兵庫県南部地震でも、震災の名称が阪神・淡路大震災なのは、そのためである。

海溝付近など海域で起こる地震の震源域は、おなじMでも陸域より広くなる。ちなみに関東大地震は、名称が示すとおり、震源域が複数の県にまたがり、M7.9である。

 

地震の頻度

震源域の大きな地震は稀にしか起こらないが、小さな地震は頻繁に起こる。ある広い領域(例えば、日本とその周辺など)で起こる地震について、ある震源域の大きさ(M)の地震の回数を数えると、Mと頻度には規則性があることがわかる。例えばM8の地震が一回起こる間に、M7は約10回、M6は約100回、というように、Mが1減ると地震の発生頻度はおよそ10倍になる。このことから、人の感じない小さな地震が多数発生していると予想されるが、高感度地震計による観測から、そのとおりであることが確かめられている。日本およびその周辺では長期間平均すると、M8以上の地震が約10年に1回、M7以上の地震は10年に7-8回、M6以上の地震は10年に60-70回発生している。

 

地表の傷跡と活断層

日本の陸域では、深さ15km(場所によっては20km)までの地下で地震が発生する。震源域の規模が大きい場合には、地下の断層の一部が地表に達し、地面に段差を生じたり、道路や水路などを水平にずらして食い違いを起こす。地下に隠れている鯰の図体が大きくなると、その頭やしっぽが地表に出てきてしまう。M7で断層の長さが大体20kmというのが目安だが、これくらいの大きさの地震(震源域が一つの県内におさまる位の大きさ)になると、傷跡が地表に残ることが多い。

地表に出来た地震の傷跡はそのまま時間がたてば、だんだん薄れていく。急な段差も徐々にならされていく。ところが、この傷跡が完全に消えるより前に、同じ場所で同じように地震が起こると、新しい傷跡が前の傷跡に重なる。このようにして繰り返し繰り返し地震が同じ場所で起これば、傷跡が次々重なった結果として、特殊な地形(直線状に長く続く崖など)ができる。これは航空写真を立体視することで容易に発見でき、活断層がそこにある証拠となる。活断層とは、このようにしてできた地震の傷跡であり、今後もここでいつか地震が起こることを教えてくれる。

 

 

 

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