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地震発生のメカニズムについて

 

東京大学地震研究所

島崎邦彦

 

今日、お話したいことは3つ。ひとつは、ひろがりについて。地震の波を発生する源である震源は、ひろがりを持っている、ということで、地震の震源域とその大きさについて。ふたつめは、ふ(ふで始まる言葉はあまりない)ではなく、ぷれーと。プレートの動きで、地震が起こるということ、どこでどんな地震が起こるのか。みっつめは、みらいについて。地震を予測するのは難しい、ということ。違う面から整理すれば、まずどのくらいの大きさの地震が起こるのか、2番目にどこで起こるのか、3番目にいつ起こるのか。ひとつ、ひろがり、ふたつ、ぷれ―と、みっつ、みらい、これが今日の主題。

 

1 ひろがり

 

地震とは何か?

地震という言葉はあいまいだ。なぜなら、二つの意味を持っているからである。例えば「今朝、関東から東北地方にかけて地震がありました」などの報道では、地震の揺れを意味しているし、「直下型地震」、「海洋性地震」などでは震源を、或いは、そこで起こる現象を意味している。

地震によって大地が揺れるのは、地球の中を地震の波が伝わってくるためであり、その地震の波を起こす源を震源と呼ぶ。ただし、震源という言葉が「震源は明石海峡の地下14キロ」などのように使われるため、点のような狭い地域と誤解されることが多い。地震の波の発生源は決して点ではなく、広がりを持っている。このことを強調して、最近では震源域と呼ばれるようになっている。

震源域では、ある面(断層面と呼ばれる)が壊れ、この面を境にして、両側の地塊がずれる。このずれは、毎秒数十センチメートル程度の速さで起こり、その動きによって地震の波が発生する。また、このずれは地層や岩体をずらして断層をつくる。このため、この運動を断層運動と呼ぶ。なまず(地震)の正体は、震源域で起こる断層運動である。

 

震源域の大きさ

1923年関東地震の震源域はおよそ100km×50kmで、愛知県や千葉県の面積に匹敵する。地下のこのように広い地域の全てから地震の波が放出されたことを強調しておく。地震の波は、地下の岩盤と岩盤とが急にずれる運動(断層運動)によって発生する。通常、最も弱い個所がまず破壊を起こし、その後連鎖的に破壊が広がっていき、岩盤がずれる。気象庁から発表される震源の位置は、観測所に最初に到着した地震の波の時刻から推定されるので、震源域の中で最初に地震の波を出した地点、すなわち最初に破壊した地点を示している。

 

 

 

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