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4. 自主防災組織と行政との関わリ

 

阪神大震災では、上に示した新たな課題もさることながら、自主防災組織と行政との関わり、市民の責務と行政の責務の線引きが問い直されることとなった。行政まかせも駄目だが市民まかせも駄目だということで、相互の役割や責任を確認しつつ、さらにはその責任の遂行を通して連帯するという原則的な立場が、大震災により確認されたのである。

震災後に、神戸市で制定された「市民安全推進条例」は、まず市、市民、事業者の役割と責務を明確にし、そのうえでの協働関係の樹立や防災活動の連携を提唱している。そのなかでは、(1)市民や地域の自己責任の考え方を明確にうちだしつつも、(2)市民の生命や財産を守るという基本的な行政責任をより厳しく問いなおす、立場が示されている。それによると、行政の役割として、1]地域自立の支援、2]協働環境の整備、3]防災基盤の形成が基本となるということである。

 

(1)地域自立の支援

防災においても、市民1人ひとりがあるいは地域の自主的な組織が自ら考え行動するという、自立あるいは自律(自己決定の拡充ともいわれる)が求められる。この地域の自立を支援する責務を行政が負うのである。そのために、自己責任の前提に情報公開があるといわれるように、防災に関わる様々な地域情報の開示(情報提供に必要な科学調査も含む)をはかることが、まっ先に求められる。それに加えて、まちづくりリーダーや防災リーダーなどの人材の育成、コミュニティ組織やボランティア組織の活動の支援などの、後押しをすることが求められている。

 

(2)協働環境の整備

行政、事業所、市民の協働はもとより、地域内の異なる主体間の協働を可能とする環境を整備することも、欠かすことができない行政の役割である。協働を効果的に推進するためには、そのための体制(例えば地域の安全会議など)、空間(例えば地域の防災センターなど)、情報(例えば地域の共有情報ファイルなど)などの環境整備をはかることが求められる。このなかでは、体制の整備に関わって、防災への市民参加のシステムの構築をはかることは、地域の協働と自立を促すうえで緊急性のある課題といえる。

 

(3) 防災基盤の整備

都市全体の防災施設の整備や防災インフラの整備はいうまでもなく、行政の責任においてなされることではあるが、自主防災組織がかかわるコミュニティレベルにおいても、コミュニティの安全に必要な防災資源の提供や防災基盤の整備をはかることは、1部を除き行政の責務となる。防災行政無線の整備や耐震用防火水槽など、行政がコミュニティと連携しつつ、その整備をはかることになる。

 

おわりに

従来の自主防災組織づくりは、やもするとその形式だけを追求する傾向が強かったが、今後はその内容をいかに実行性のあるものにしていくかを、問題にしてゆかなければならない。自主防災組織とその活動を地域文化として定着させる努力が欠かせない、ということでもある。

 

 

 

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