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2. 阪神大震災と自主防災組織

 

阪神大震災において、地域密着型の防災活動が多様かつ広範囲に展開されたことは、数多くの震災関連の報告書等が明らかにしているところである。この地域に密着した組織が消火や救助などの防災活動を展開したという点においては、広義の自主防災組織が非常に大きな役割を果たしたということができる。他方、震災前から「自主防災組織」として公認されていた自主防災組織(震災当時の兵庫県の自主防災組織の組織率は29%)は、一部を除いて組織としての防災活動を展開することができていない。この点からは、狭義の自主防災組織は本来の期待されていた役割を十分に果たせなかったということができる。

 

(1)消防団や婦人消防隊等の活動

消防団(準公設の消防団を自主防災組織と呼ぶかどうかは別として)は、消火および救出に非常に大きな役割をはたした。西宮市、芦屋市、東灘区などの地域で、市街地大火を防止しえたのは、地元消防団の迅速で効果的な消火活動があってのことである。その他の地域においても、消防団員が地域住民のリーダーとして消火活動に貢献している。

消防団の活動として特筆されることは、消火活動に加え生き埋めになった人の救出活動の中心的な役割を果たしたことである。消防団による救出は、他の組織と比較して生存率が高い(例えば、長田区では391人中367人を生きたまま救出)ことが明らかになっているが、その専門性、組織性、即応性を兼ね備えた消防団ならではのことである。

専門的な防災組織の活動ということでは、婦人消防隊や婦人防火クラブの活動も見逃せない。地区婦人会等と協力して、炊き出し等の活動を積極的に展開している。

 

(2)事業所の自衛消防隊等の活動

今回の震災では、地域内の事業所が「企業市民」として、地域の防災活動に大きく貢献している。長田区の市街地大火を未然に防いだ三ッ星ベルトの自衛消防隊の活動は有名であるが、消火、救出、給水や給食さらには搬送などの活動に、地域に密着した事業所の自衛消防隊等が大きな働きをしている。

 

(3) 自治会、狭義の自主防災組織の活動

被災地の自治会や「自主防災組織」の直後の活動をみると、何よりもそのリーダーが被災した組織が多く、かつ地震を対象とした活動計画を持っていなかったうえに、組織だった震災訓練の経験もなかったために、先にのべたように大半が組織的な活動を展開することができていない。これについては、「なぜ十分な活動ができなかったのか」について、今後の教訓として明らかにすることが求められる。

とはいえ、地域の救助活動を展開した高羽自主防災会、地域の避難誘導を組織した花山台自治会、避難所運営に大きな力を発揮した北淡町町内会など、積極的な活動を展開した自治組織や自主防災組織が少なからず存在したことも、念のため申し添えておきたい。

 

 

 

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