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阪神大震災後の自主防災組織の課題と行政の役割について

 

神戸大学都市安全研究センター

室崎 益輝

 

はじめに

 

阪神・淡路大震災(以下、阪神大震災と略称)は、改めて自主防災組織の果たす役割の重大性とその活性化の必要性を再認識させる、教訓に満ちた不幸な出来事であった。そこでここでは、阪神大震災の教訓を踏まえての自主防災組織のあり方とその活性化の方向について考えてみることにしたい。

 

1. 自主防災組織とは?

 

ここでいう自主防災組織とは、(1)地域に密着的した防災活動を、(2)組織的あるいは連帯的に展開することを目的に、(3)自らの責務として自覚的に取り組んでいる、地域住民組織のことをいう。

必ずしも、「自主防災組織」あるいは「自主防災会」と公称(もしくは認定)されている組織に限定せず、計画的に防災活動を行う自主的な地域組織として幅広く捉えている。なお、自主的な防災活動を展開する組織であっても、責務として位置づけられずまた地域が限定されないという点で、防災ボランティアとは区別される。

その組織形態は、町内会・自治会等を母体としたもの、防火クラブや日赤奉仕団等を核としたもの、新たに自主防災組織等として結成されたもの、各種地域組織のゆるやかな連携組織としてあるもの、など様々である。と同時にその組織単位も、自治会など近隣単位で組織されているもの、小学校区など学校区単位で組織されているものの他、婦人会や青年団など地域階層別に組織されているものなど、様々である。

この自主防災組織の定義に関わって留意すべきことは、地域における<多様な主体の自覚的参加による連携した防災活動>の芽をいかにして育てていくかという観点である。排他的で杓子定規な物差しで、自覚的な防災活動の芽を摘み取ることがあってはならない、ということである。とはいえ、地域の自治のルールを無視した活動が許容されるものではなく、自主防災組織の育成については多様性と自律性の接点を探っていくことが、大きな課題となっている。

 

 

 

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