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全期間を通じての優占種は、多い順にマツモムシ、コミズムシ、ヒメアメンボ、フタバカゲロウの一種でこの4種で全個体数の約63%を占めた。また、種数から見た優占目はコウチュウ目(17種)、卜ンボ目(15種)、カメムシ目(14種)で、この3目で全種数の約80%を占めた。

確認された水生昆虫はため池への侵入方法によって、ため池造成時からいた種(2種)、前年に産まれた卵から孵化した種(2種)、成虫が飛来した種(28種)、成虫が飛来し産卵した結果発生した種(20種)、水源から水路経由で運ばれてきた種(4種)の5つのグループに分けることができた。移動力をもつ成虫により新たな生息場所への移入がすみやかになされるのは、止水性昆虫の特徴のひとつと考えられる。

全種を含めた水生昆虫の個体数は、1年目の冬季には大きな落ち込みを示したが、他の期間は比較的安定して推移した。1年目の冬季の密度低下は、コミズムシなど、この時期に高い密度で推移する程がまだ定着していなかったことによると考えられる。種数については、1年目、2年目は9月中旬に、3年目は7月中旬に顕著なピークを示し、冬季には落ち込む傾向が認められた。また、1年目よりも2年目の方がため池を利用する昆虫の種数が増加し、3年目は2年目とほぼ同レベルで推移した。

トンボ目の累積種数は1年目に急激な増加を示したが、その後も緩やかに増加し、消滅した種はなかった。カメムシ目の累積種数は、2年目の10月まで増加し続けたが、その後新たな移入種はなかった。また、ヒメミズカマキリのように1個体のみ見られた種やオオアメンボやアメンボのように一時的にこのため池を利用した種を除けば、消滅した程はほとんどなかった。コウチュウ目の累積種数は調査期間を通じて増え続けたが、実際には2年目以降ヒメゲンゴロウやシマゲンゴロウなど消滅する種があり、3年目には現存種数の減少が見られた。

1年目と2年目の同時期を比較すると、2年目以降にはクロゲンゴロウなど新たに侵入した種、コオイムシやコミズムシのように繁殖が確認され個体数が増加した種、オニヤンマやシオカラトンボ類のようにため池内で越冬した種が見られ、群集構造に顕著な変化が見られた。しかし、2年目と3年目を比較すると、1年目と2年目ほど大きな群集構造の変化はなかったことから、このため池における水生昆虫群集の遷移はかなりすみやかに進行したものと考えられる。

 

 

 

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