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(2) 両調査地の水生昆虫群集の比較

調査地Bでは、調査期間を通じて調査地Aとまったく同じ8目に属する63種の水生昆虫が確認された。優占種は多い順にコミズムシ、マツモムシ、ヒメアメンボ、フタバカゲロウの一種で、上位4種の種構成は調査地Aと同じであり、この4種で全個体数の約6割を占めたことも同じであった。調査地Aの水生昆虫群集を調査地Bのものと比較すると、造成後、年を追って群集構造が類似してくる傾向が認められた。このことは、同じ地域にある同じタイプのため池では、そこに成立する水生昆虫群集の構造はある一定の方向に遷移していくことを示唆している。

以上の結果から、自然豊かな中山間地に新たに浅いため池を造成した場合、比較的短期間に、主として成虫の飛来によってその地域独特の水生昆虫群集が形成されることが示された。その中には、生活史のすべてを過ごす種、一時的生息地としてのみ利用する種、繁殖場所として利用する種などが含まれ、休耕田を掘り起こすだけで水生昆虫のレフュージアとして高い価値をもつビオトープが形成されることが実証された。また、水生昆虫群集の遷移は、全体としてみると、現存種数と個体数は比較的すみやかに一定のレベルに達し、その後は安定して推移するようになるものの、グループごとに見ると、トンボ目やカメムシ目のように消滅する種がほとんどなく種数が増加するものと、コウチュウ目のように種の入れ換わりが顕著で次第に種数が減少するものなどさまざまであることが明らかになった。

 

 

 

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