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第2章 大阪府能勢町の休耕田の水生昆虫群集

 

有機塩素系や有機リン系の農薬を使わず、圃場基盤整備が行なわれていない伝統的栽培法下の環境を残した水田や休耕田は、ごくわずかであるが全国の中山間部に散在して、そこではかつてのゲンゴロウやタガメといった高次消費者を含む群集の成立した高いレベルの生物多様性を部分的に維持している生態系である可能性がある(日鷹,1998)。このような環境として大阪府能勢町の休耕田を選び、水生昆虫群集の構造を調査し、第1章で詳細に記述した豊能町において休耕田を利用して造成したため池(調査地A)に成立した水生昆虫群集と比較した。

 

調査地と方法

 

1. 調査地

調査地は調査地Aと直線距離で約10km離れた大阪府能勢町森上の標高約300mにある棚田の最下部の休耕田に設定した(調査地B)(図17)。棚田の上部には水源であるため池があった。この棚田は5枚からなり、上から3枚目では稲作が営まれていた。調査地Bとして設定した休耕田は1997年には稲作が行われていたが、1998年は放棄された。この休耕田は常に水が張られており、水深は調査地Aと同じく10〜20cmであった。また、聞き取り調査によると稲作が営まれた時においても、農薬は一切使われなかったという。

 

2. 調査方法

調査は1998年4月から11月まで、原則として毎週1回、12月および1999年1月には1回ずつ計25回行った。調査は、調査地Aと同様の方法で行った。

 

3. 解析方法

調査地Aと調査地Bの水生昆虫群集の重複度をCπ指数を用いて算出した。また、調査地Aの調査距離は54m、調査地目の調査距離は22mであったので、個体数を比較するときは、10mあたりの個体数に補正したものを用いた。

 

 

 

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