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(2) トンボ目

トンボ目は水域生態系において捕食者として生態的に重要なグループであり(Samways,1996)、本調査地で確認された水生昆虫のなかでも種数、個体数ともに大きな割合を占めた。

トンボ目の累積種数はため池造成直後から急激に増加した後、2年目以降も緩やかに増加した。これは本目の成虫の高い移動能力によるものと考えられ、このため池に到達した種が次々と定着したものと思われる。また、消滅種はなく、その結果、現存種数は年を追って増加し続けた。止水生トンボ類のように幼虫時代に水田やため池といった環境を利用する種は、撹乱などに対する抵抗性が強く(松良,1998)、本調査地のような、休耕田を利用して造成したため池のような半自然的環境は、本目にとっての生息場所として好適であり、今後、継続的に、すでに侵入した種の個体数の増加や新たな種の侵人が見られると考えられる(図13)。

(3) コウチュウ目

コウチュウ目の累積種数は調査開始時より終了時まで増加し続けたが、どの年でも特に9月に増加する傾向が認められた。この時期は多くのコウチュウ類の羽化時期または移動分散時期に当たると考えられる。

ゲンゴロウ類群集には生態遷移現象が指摘されている。例えば、遷移系列の初期段階の池にはヒメゲンゴロウやコシマゲンゴロウ、遷移が少し進むとマメゲンゴロウ、シマゲンゴロウなどの種が加わり、さらに進むとオオヒメゲンゴロウが加わるが、コシマゲンゴロウやシマゲンゴロウが消滅するというように、ゲンゴロウ類群集は遷移が進行するにつれて大型化する傾向がある(八木,1996)。

 

 

 

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