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54) ヨツメトビケラPerissoneura paradoxa

2年目の11月上旬に1個体のみ確認された。本種は山地の湧泉流や細流に生息する(川合ら,1990)。本調査地においても水源である渓流部で多数確認されたことから、ため池内で確認された個体は水源から流れてきたものと考えられる。

 

7. 個体数、種数の時間的推移

調査期間中の水生昆虫の個体数は、1年目の11〜12月に、コミズムシやフタバカゲロウの一種などの冬季に高い密度で推移する種がまだため池内に定着していなかったために一度顕著な落ち込みを示したが、2年目の1〜3月にかけて再び増加し、その後、調査終了時まで安定して推移した。

種数はため池造成時の2種から徐々に増加して、1年目は9月旬にピークを示した。1997年には9月中旬に、1998年には7月上旬に顕著なピークが認められた。1年目のピーク時は18種が確認されたのに対して、2年目、3年目にピーク時には27種が確認された。また、1年目よりも2年目の方がため池を利用する昆虫の種数が増加し、3年目は2年目とほぼ同レベルで推移した。ピーク時に確認された個体数から概算すると、このため池には4000個体、1m2当たりに換算すると約20個体の水生昆虫が現存していたことになる。

種数の増減が見られたにもかかわらず、個体数が比較的安定して推移したのは、春にはマツモムシ、ヒメアメンボ、夏から秋にはマツモムシ、アオイト卜ンボ類、コミズムシ、冬期にはフタバカゲロウの一種やコミズムシというように、各時期に個体数の突出した優占種が入れ換わりながら昆虫群集が推移したためである(図11) 。

 

8. 優占3目の種数の推移

(1) カメムシ目

カメムシ目の累積種数は2年目の9月下旬まで増加した、その後、新たな移入種はなかった。また、ヒメミズカマキリのように1個体のみ確認された種やオオアメンボやアメンボのように本調査地を一時的に利用した種、シマアメンボのように本来、止水的環境を生息場所としない種を除けば消滅種はほとんどなかった。現存種数については、1〜2年目にかけては増加したが、3年目は2年目とほぼ同レベルで推移した。カメムシ目については2年目にほぼ種構成が安定したと言える(図12)。

 

 

 

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