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25) ミズカマキリRanatra chinensis

幼虫は1年目の6月下旬にのべ3個体確認されたのみであった。成虫は7月上旬〜11月上旬、2年目の4月下旬〜5月中旬、7月下旬〜10月中旬、3年目は4月上旬〜5月中旬、7月中旬〜10月の中旬に確認された。本種は、すくなくとも1.4キロもの飛翔移動をするほど飛翔能力が高く(日比,1994)、2年目、3年目には幼虫が確認されなかったことから、このため池で確認されたほとんどの成虫は遠方より飛来したものと考えられる。2年目、3年目には繁殖期だと思われる6月に成虫が姿を消したためこのため池を繁殖場所としては利用しなかったと考えられる。その理由として本種の水中生活において卵期がもっとも難しい時期で、卵は陸上の土中に産みこまれ、水中では発育できない(伴、1997)ということが考えられるが、同じ様な産卵形態をもつタイコウチ(伴,1997)では幼虫が確認されたことから、他にも原因があると考えられる。

26) ヒメミズカマキリR.unicolor

1年目の9月中旬に1個体のみ成虫が確認された。成虫の飛来によって、ため池に侵入したものと思われる。本種は日本産タイコウチ科に属する種のなかでも最も水中生活に適応した種であり(伴,1997)、本調査地のような浅いため池は生息地として適していないのかもしれない。

27) コオイムシAppasus japonicus

成虫は1年目の10月中旬に数個体の侵入が確認され、12月上旬まで確認された。2年目には3月中旬から再び確認されるようになり、6月上旬から7月上旬に見られなくなった時期はあったが、その後調査終了時まで継続的に確認された。幼虫は2年目の5月中旬〜10月中旬、3年目は4月下旬〜9月中旬まで高い密度で推移した。成虫の飛来によって、ため池に侵入したものと思われる。本種について冬季に陸にあがり土に潜って越冬する個体の観察記録があるが(橋爪,1986)、冬季にもため池内で確認される成虫がいたので、水中でも越冬する個体がいるようである。

 

 

 

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