今回造成したため池で確認された水生昆虫は、a)マツモムシ、ヒメアメンボのように最初から休耕田に生息していた成虫が産卵して増殖したもの(2種)、b)ナツアカネやオオアオイトトンボLestes temporalisのように前年から卵で越冬して、孵化して発生したもの(2種)、C)フタバカゲロウなどのカゲロウ目、多くのトンボ目、トビケラ目、カワゲラ目、ヘビトンボ目、ハエ目のように、成虫がため池に飛来して産卵し、発生したと考えられるもの(20種)、d)コウチュウ目やマツモムシ、ヒメアメンボを除くカメムシ目などのように、飛来し発見された成虫そのもの(28種)、e)ニシカワトンボMnais pruinosaのように幼虫が水路経由で運ばれてきたもの(4種)という5つのグループに分けることができる(表2)。いずれにせよ、水生昆虫はどこかから飛来することから、都市公園のように、水生昆虫の供給源から違い場所にため池を造成した場合には、今回のような急激な種数の増加が見られるとは限らないであろう。
6. 各種の密度の時間的推移(図6)
1) フタバカゲロウの一種Cloeon sp.
1年目の12月中旬に幼虫が発見され、ため池への侵入が確認された。成虫がこのため池に飛来して産卵した結果発生したものと思われる。その後、断続的に確認されたが、1年目、2年目とも冬季に高い密度で推移した。
2) クロ夕ニガワカゲロウEcdyonurus tobiironis
2年目の2月中旬〜4月上旬、2年目の12月上旬〜3年目の4月上旬に確認された。成虫がこのため池に飛来して産卵した結果発生したものと思われる。
3) フタスジモンカゲロウEphemera japonica
2年目の4月下旬に1個体のみ幼虫が確認された。本程は上・中流域の比較的きれいな水域の砂泥底に生息する(川合ら,1990)。本調査地においても水源である渓流には多数確認されたことから、ため池内で確認された個体は水源から流れてきたものと考えられる。