利用しているという人は、その普及が不十分なためにほとんどおられないのが現状だと思います。さらに、その他多くの地域では家族会だけではなくボランティアグループもご家族へのサポート体制を強めてきていますが、これもご家族全体のニーズからいうと例外的な部分と言わざるを得ません。つまり、ご家族へのこころのケアの体制を早急に充実させなければならないと思います。
ご家族のこころのケアということに限定し、内容をもう少し具体的にいうと、まず、発病時期の混乱し、不安だった記憶は、患者さんだけではなくご家族にもいつまでも暗い影を落とし、「再発しないか」、「万一再発したらどうやって病院にかかるようにするか」、と尽きない不安にご家族自身が今も精神的ストレス状態となっているといえます。
また、「この病気は治るのか」「薬は一生飲み続けなければならないのか」など具体的、専門的疑問に答えて欲しいばかりでなく、被害妄想や躁状態などに対して患者さんご本人と「どう接すればよいのか」などご家族ご自身への実際的なアドバイスも希望しておられます。
同時に、とくに患者さんのご両親の場合、ご両親が亡き後、我が子がいかにして生きていくのか、生活の保障が得られるのかという不安も拭いさることができません。
つまり、患者さんだけでなく、「ご家族にもストレスの軽減」、「実際的な説明」、「将来に対する保証」というこの3つが最低でも必要であるのだと思います。
さて、今回は家族の在り方を論じる機会と与えられたわけですが、私が強調したいのは、ここで、「家族としてどう在るべきか」を論じる前にむしろ、「家族としてどうあるべきかを論じられるような医学的、社会的基盤を早く整備しなければならないこと」を論じて欲しいということなのです。つまり、支援体制を確立させないまま、ご家族に何かタスクをかけるのは荷が重すぎるのではないかといいたいのです。
早急に病院の医師や看護婦、薬剤師、ケースワーカーのご家族支援の体制をより充実させ、加えて病院以外でも訪問看護婦、保健婦、心理士、家族会、ボランティアを増やし、ご家族と連絡、連携する時間を増やす努力をしなければならないと考えます。そして、治療者である我々は、ご家族が病気の知識を持っていて、ある程度それを納得しているというような先入観を持たないようにし、いつまでも親身になって支援を続ける体制を速やかに充実させ、それをご家族が遠慮なく利用できるようにすることが大切であると思います。
<プロフィール>
(財)松原病院 院長 松原 六郎
昭和52年 東京慈恵医科大学卒業
金沢大学精神科
昭和58年 福井医大精神科
平成6年 (財)松原病院(福井)
現在 福井保健所精神相談嘱託医