しかるに今日世界人口の4分の3を占め、21世紀中には8割を超えるとみられているアジアとアフリカは、水資源の確保が大きな政策課題になるであろう。特にアジアでは、すでに西アジア諸国の多くは水ストレスの状態にあり、一部では海水の淡水化などによる改善を図っているが、巨大人口国のインドと中国(両国で世界人口の38%を占める)の水不足問題は両国の食糧増産、工業開発の足かせになる恐れがあるばかりか、穀物市場の需給を通じて世界の食糧事情にも大きな影響を及ぼす可能性がある。(16)
中国とインドは生活水準の向上を目指して市場経済化に踏み切り、経済開発を急速に推し進めようとしている。その週程で両国は、人口増加と生活水準の向上にともなう食糧需要の増大、工業化・都市化にともなう工業用、民生用の水需要の増大により、急激に水ストレス、水不足に陥る危険がある。両国とも、今後の開発戦略を策定するに当たっては、ダムの増設、運河の設置など取水効率を高め、農業ならびに工業を水使用効率の高いものに転換し、水質の汚染を防ぐなどの政策努力を組みこんでいく必要があろう。
[引用文献]
(1) Ehlich, P. R. et al,The Population Explosion, Simon and Schester, 1990.
(2) United Nations, World Population Projections to 2150, ESA/P/WP. 145, 1998.
(3) Meadows, D. H. et al, Beyond the Limits, Chelsea Green 1992.
(4) United Nations, World Population Prospects: The 1996 Revision, Annex I: Demographic Indicators, 1996.
(5) United Nations, World Population Prospects: The 1992 Revision, 1993; United Nations, World Population Prospects: The 1994 Revisions, 1995.
(6) Cleland, J.,"A Regional Review of Fertility Trends in Developing Countries: 1960 to 1995,"in W. Lutz(ed.),The Future Population of the World(rev. ed.),IIASA,1996, pp.47-72.