(3) 熱量の20%を肉類から摂取した場合
食肉からlkcalを摂取するには、穀物から1kcalを摂取する場合に比べて、10倍の植物(土地、水)を必要とする。したがって、もし食肉の割合を高めれば、「水ストレス」はより強くなる。いま、2,350kcalのうち20%を食肉からえるとすると、Cohenの式における定数項10は、[10xO.8+1xO.2=8.2]となる。これを用いて「標準ケース」と「75%効率改善ケース」の最大許容人口を修正すると表3の(4)、(5)欄と表4の(3)、(4)欄となる。
「標準ケース」の修正ケース(食肉20%)の場合、世界全体では169億人となり、2050年はもちろん2150年の将来推計人口(108億人)をも上回っているが、アジアの人口は早くも2025年には最大許容人口(45億人)を上回り、アフリカの人口も2030年代には最大許容人口(17億人)を上回る。(2050年には、アジア、アフリカにおいて最大許容人口を各々9.9億人と3.2億人上回ることになる。二大人口国の中国とインドの1995年人口はすでに各々の最大許容人口(11.5億人と7.6億人)を上回っている。
これに対して標準ケースに対して水利用率を75%改善した(食肉20%)ケースではアジア、アフリカの将来人口は最大許容人口(各々30億人と77億人)を超えることはない。また、二大人口国のうち中国の人口も最大許容人口を超えることはないが、インドは2025年には最大許容人口(d 23.2億人)を超え、2050年には2.1億人上回ることになる。
おわりに
主として先進地域のオセアニア、北米、ヨーロッパ、ならびに主として途上地域の南米については、21世紀においても、部分的にはいざ知らず全体としては、水資源が食糧ならびに人口の制約要因になることは考えにくい。これらの地域については、かなり厳しい条件(表3のケース3の場合)の下でも水資源には十分な余裕があり、先進地域はもちろん、南米の場合は今後の工業化の進展、都市化、生活水準の向上による水需要の増大を考慮に入れたとしても、水不足の問題は起こりそうもない。