逆に、水を最も利用しないケース(U=100%、D=2,350kcal、L=20%)では、Waに応じて1,375億人、470億人、302億入となるが、有効淡水量を100%使用することは全く考えられず、こちらの方はその点であまりに非現実的であり、水資源からみた世界の最大許容人口はこれを大幅に下回ることは言うまでもない。
世界の水利用の現状に比較的近いと思われる標準ケース(すなわちU=20%、D=2,350kcal、L=40%)では、Waに応じて205億、70億、47億となる。水資源からみる限り、世界の最大許容人口はそれほど大きなものではなく、逆に見れば、21世紀の世界は全体として水資源の利用効率によりかなり制約されうることを示している。
(2) 「標準ケース」と「75%効率改善ケース」における主要地域別最大許容人口
いまCohenの式において、U=20%、D=2,350kcal、L=40%とし、Wa=年間更新可能淡水有効水量(世界の場合は41,000km3)とする標準ケースについて世界の主要地域別の最大許容人口を求めると表3の(2)欄のようになる。
この「標準ケース」における最大許容人口を世界の主要地域別の現在と将来の人口と比べてみると(表4の(1)欄)、1995年現在の人口は、いずれの地域も最大許容人口を下回る。しかしながら2050年になると、アジアの総人口は54.4億人となり最大許容人口(54.0億人)を上回り、アフリカの総人口も20.5億となり最大許容人口(21.01億人)に並ぶ、世界の二大人口国である中国とインドについてみると、1995年現在ではインドの人口はすでに最大許容人口(9.3億人)と一致しており2050年には最大許容人口を6億人下回る。中国の人口も2025年以前に最大許容人口(14.0億人)を超え、2050年には1.2億人上回る。
Cohenの式においてU、Lはともに水資源の利用効率を表している。ここで、両者を合わせたU(1-L)を「標準ケース」に対して75%改善した場合(75%効率改善ケース)について同様の計算をした結果を表3の(3)欄(ケース2)、表4(2)欄に示す。この場合、最大許容人口は、世界、主要地域について「標準ケース」に対して72%増大し、アジア(中国、インドも含め)、アフリカの人口も21世紀全体としてこれを下回ることになる。