ローマ・クラブの第2報告書は、1990年時点で世界の出生率が置換水準に変われば世界の人口は77億人で安定し、少なくとも1世紀間は「破局」のない世界を逃れるものと予想した。(3)しかし国連の中位推計による世界人口は、ローマ・クラブの「持続可能な」人口を2020年頃には上回る勢いで増加することを示している。
地域別には、先進地域の人口は21世紀中は大きな変化はないが、途上地域の人口は、2050年までにはなお36.9億人増加して82.0億入となるであろう。(4)絶対値としてはアジアの人口増加は大きく、1995年の34.4億人から20.0億人増加して2050年には54.4億人に達する。なかでも2つの巨大人口国の中国とインドの人口は、1995〜2050年に、各々12.2億人から15.2億人へ、9.3億人から15.3億人へと増加する。増加率の大きいのはアフリカの人口であり、同期間に7.2億人から20.5億人へと2.8倍増となり、2050年時点で世界人口の21.8%を占めることになろう。
(2) 世界人口に関する楽観論
21世紀における世界人口の伸びはなお著しいものがあるが、90年代に入って発表された2年毎の国連推計によれば、例えば2025年と2050年の世界人口の見通しは85.0億人と100.2億人(92年推計)、82.8億人と95.8億人(94年推計)、80.4億人と93.7億人(96年推計)というように、毎回下方修正されてきている。(5)これは、主として途上地域の人口増加率ならびにその主な決め手である出生率が、年々予想以上に低下してきていることが分かってきたからである。
60年代、70年代には途上国の出生率の将来に関しては悲観論が支配的であった。その時代に出生力転換の過程にあったのは経済発展が進む一部の小国に限られ、近代化がなければ出生力転換が起こりえないという考え方が強かった。しかるに、80年代から90年代にかけて、アジアやラテンアメリカにおいて、中国に代表される多くの人口大国、経済発展が進まない国々でも出生率低下が始まり、それは途上地域で「例外どころか当たり前の事実」となってきた。(6)特に南アジアやサハラ以南のアフリカの最貧国と言われる国々でも出生率低下が始まったことは、よく管理された家族計画プログラム、ならびに社会開発プログラム(貧困撲滅、基礎保健の普及、基礎教育の普及、女性の地位向上など)は出生力転換の促進要因になりうることが証明された結果と言える。