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第4章 世界人口の制約条件としての水資源

 

国立社会保障・人口問題研究所

副所長 阿藤誠

 

はじめに

 

21世紀の世界人口増加は人々の生活水準向上の大きな制約条件となり、経済発展と結びついて地球の資源・環境に大きな影響を及ぼすが、世界人口の増加それ自体も資源・環境の制約を受ける。資源・環境が有限である限り、18世紀末にマルサスが予言したように人口増加はどこかでチェックされざるをえない。多くの資源のなかで淡水は、今日、飲料水として、食料生産の必須資源のひとつとして、また工業用水として、人間の生活に欠かせないものであるが、これまで一部の砂漠地帯の国々を除けば、水(不足)の問題はそれほど大きな資源制約条件とは考えられてこなかった。
しかるに、21世紀の世界人口の増加は50年間で倍増に近い勢いを見せ、食料増産のための灌漑化が不可欠であり、工業化・都市化により民生用、工業用の水需要の増大が続くなかで、多くの国で水が希少資源となる可能性が大きくなってきた。本稿では、世界人口の主要地域別の将来見通しを概観するとともに、水資源が世界の主要地域においてどの程度人口増加の制約条件となりうるかを検討してみたい。

 

1. 世界人口の見通し

 

(1) 国連による将来人口推計

世界の人口は来年には60億人に達しようとしている。人口増加率は1965〜70年に2.04%でピークを迎えた後、低下を続けているものの、今日(1995〜2000年)なお年率1.37%の高さである。とりわけ世界人口の79%を占める途上地域の人口の増加率は年率1.65%の高さである。極端な論者によれば、今日の世界人口ですら地球環境、資源、エネルギー、食料からみて「持続可能」でないとみるが、(1)ましてや21世紀の世界人口がどこまで増加を続けるかによって、まさに地球は破局を迎える恐れすらある。

最新の国連人口推計(1996年版中位推計)によれば、(2)世界人口は2025年に80億人、2050年に94億人、2100年に104億人、2150年に108億人に達するものと予想されている(表1)

 

 

 

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