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2 農業重視政策への転換:緑の革命と農業問題

 

農業が経済発展の足枷となりはじめたことから、政席もそれまでの工業優先から農業重視への政策転換を迫られることになった。農業危機が発生した頃には耕地面積の外延的拡大は限界にきており、穀物増産は土地生産性の増加に頼らなくてはならない段階に達していた。同じ頃、多くの開発途上国も人口増加に耐えきれずに穀物を輸入に依存していた。こうした事態に対処するために、1960年代後半から小麦と米の高収量品種(High Yielding  Variety)を基盤とする新農法、すなわち緑の革命が展開をみせはじめた。インドは、その恩恵を最も受けた国のひとつであろう。

緑の革命による穀物生産の増加により、1970年代後半には、インドは穀物輸入への依存体質から脱却していった。といっても緑の革命の前後の期間で1人1日当たり穀物消費量に変化がなかったことから明らかなように穀物生産の増加は穀物輸入を代替しただけであり、国内の穀物の需給関係に根本的な変化がみられたわけではない。また緑の革命は、リカードの罠からインド経済を離脱させはしたものの、新たな問題を派生させた。それを(2節-1)地域間格差の拡大と(2節-3)農民の市場経済への関与(市場ネクサス)の拡大の2点からみていこう。そしてこのことが、3節で議論される農民の圧力団体化と今後の食料不足の可能性という、農業問題に絡むインド経済のふたつの撹乱要因についての議論につながっていく。

 

2-1 地域格差

緑の革命は、高収量品種・灌漑そして化学肥料を三位一体として成立する農法である。灌漑を中心とする農業インフラの整備を必要とする高収量品種の導入は、それまでのポピュリスト的な平等主義的農村開発から、比較的インフラ条件の整った地域に農業投資の重点を置く集約的農業地域計画(Intensive Agricultural Area Programme:1964/65年)へと、公正よりも効率性を追求する農業政策への転換をもたらした。

 

 

 

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