四半世紀後の2020-25年になっても、中国の0.5%に対して、インドは1.0%と倍の高さを維持するものとみられている。その結果、中国では人口増加が急速に減速してゆくのに対して、インド人口は活発な増加を続け、国連推計(中位)によれば来世紀の半ば近い2045年には中印の順位が逆転し、インドが世界最大の人口国となるとされている。(図1および図2参照)
このように対照的な中印両国の人口推移は、1970年代の後半からその違いが顕著になってきた。まずインドの人口増加率は1980年代後半まで2%を下回ることなく、高位で安定していた。それが顕著で持続的な低下傾向を示し始めたのは1980年代の後半である。これに対して中国では、1949年の中華人民共和国成立以来、その人口増加率は異常に大きく変動した。すなわち人口増加率は、共和国成立直後のベビーブーム期を経て、1950年代後半には一旦1.5%まで低落した。しかし増加率はその後上昇に転じ、大躍進政策から文化大革命に至る1960〜1975年の期間には2%を越し、とくに1960年代後半にはインドを大きく抜いて2.6%となった。しかし1970年代後半になると、中国の人口増加率は再び1.5%まで急落し、その後もインドとの差を保持したまま低下を続けているのである。(図3参照)
このように人口について見る限り、インドは中国とは異なって、今後も活発な成長を続ける見通しである。社会経済的諸問題に対する人口増加の重要性を考えると、インドの将来人口を左右する要因とそれに影響を及ぼす諸条件を慎重に検討し、見通しを誤らないことが大切である。
2. 人口増加の要因
<死亡率の推移>
インドは独立以来、国民の栄養状態、公衆衛生、医療サービス等の改善によって、着実に死亡率を低下させてきた。1950年代初頭、年間死亡率は人口1000人あたり25人であったが、その後大幅に改善し現在では9人前後まで下がっている。これを平均寿命で見ると、独立直後は40歳を下回っていたものが、現在では62歳を越えようとしており、乳児死亡率(出生数1000人あたり)も同じ期間に190から72へ60%以上の低下を示している。