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第3章 インドにおける人口―政策・動向―

 

日本大学文理学部

教授 井上俊一

 

1.インド人口の推移

 

1998年(年央)のインド人口は、9億8700万人と推定されており、一両年中には10億人の大台に達するものと思われる。言うまでもないが、インドは中国に次ぐ世界第二の人口大国であり(中国の人口は12億6000万人)、1平方キロメートルあたりの人口密度は285人で、主要な発展途上国のなかでは、バングラデシュとともに最高の人口稠密国である。インドは、1951年に始まる第1次5カ年計画のなかで世界で初めて家族計画を国策として採用したことによっても知られているが、それにもかかわらず人口増加率は現在でも1.8%と依然として高く、毎年の増加数は1700万人を越え、年間増加数としては中国のそれを大きく抜いて世界最大である。こうした人口増加は、インドの発展を支える諸条件、なかんずく食糧生産・水資源の確保に対して大きな問題を提起することになる。本章では、こうしたインド人口の特徴のいくつかを点検し、その要因を考察することによって、人口サイドから見たインドの将来を展望してみたい。

インドがイギリスの植民地支配を脱し、パキスタンとの分離を経て独立を果たしたのは1947年であった。それ以後現在に至るインド人口の増加は極めて大きい。独立後最初に行われた1951年の人口センサスによると、インドの総人口(国境紛争のためセンサスが行われなかったジャムー・カシミール州を除く)は3億5700万人であったが、40年を経た1991年センサスではおよそ2.3倍の8億3858万人(ジャムー・カシミール州の推定人口を加えると8億4400万人)となった。この期間の人口増加率を平均すると年率2.1%である。

人口動態の推移の観察を基礎として作成された国連の将来人口推計によると、インド人口は今後も活発な増加を続け、2010年前後に12億人、2025年頃に14億人、2040年頃には16億人の大台を越える見通しである。年間の増加数も2015年頃までは1500万人を越え、それが1000万人に縮小するのは2030年代の後半になるものと予測されている。

インドの人口推移の特徴は、中国と較べると一層明らかになる。インドの人口増加率は現在(1995〜2000年)1.8%で、中国の1.0%と較べて格段に高いが、この開きは将来も大幅に縮まることはない。

 

 

 

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