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(1) 中国食糧需給に関する悲観的予測

その先鞭をつけたのは米ワールドウオッチ研究所所長のレスター・ブラオン氏の予測である。同氏によれば、中国は2020年-2030年頃には現在の世界の総穀物貿易量に匹敵する2億-3億トンの穀物を輸入することになる。そうなれば世界の穀物価格は高騰し、中国ばかりか第三世界全体が飢えに苦しむことになる。しかし、ブラウン氏の予測は根拠が薄弱である。たとえば、非常に重要な指標の一つとして、作付面積の減少を具体的な予測値で示していないからである。

1995年10月に、日本海外経済協力基金(OECF)開発援助研究所も中国の食糧需給の見通しについて、その予測結果を発表した。ブラウン氏の場合に比較して、10%強少ないが、これもまた大量の穀物輸入を予測している。ただし、中国の増産努力いかんでは、輸入量が半減可能な点も指摘している。

 

(2) 21世紀における中国の人口増加・耕地開発及び食糧生産の見通し

21世紀にはいると中国は、果たしてブラウン氏らの予測されたような穀物輸入大国になるであろうか。

中国国家統計局の発表によると、中国大陸の総人口は1995年2月15日に12億に達した。これは世界の総人口57億の21.4%をしめる巨大さである。中国の将来人口増加についてみると、第9次5カ年計画(1995-2000年)期間には13億以内に抑えると発表された。さらに21世紀半ばまでの長期展望では、大陸の総人口を15億-16億に抑え、最終的に人口ゼロ成長を実現する。2030年には16億というピークに達して、その後さらに緩やかに引き下げることを目指している。

このような人口増加に伴って、中国は自分で養うことが出来るかどうかは世界的な関心を寄せているところである。事実上、中国は世界の耕地面積のわずか7%を占めるにもかかわらず、世界総人口の約22%の人口を養っている。新中国が成立してからの約50年間、人口増加によりー人当たりの耕地面積は2.7ムー(畝)から1.2ムーまでに減少したが、一人当たりの食糧が逆に209キロから380キロに増加してきたのである。

中国農業部及び中国科学院生態環境研究センターも予測を行っていたが、その結果によると、中国の食糧生産量は1973年-95年までの期間において72.1%増え、1993年には4億5640万トン、1995年には4億6000万トンに達し、2000年に5億-5億2000万トンに達する。

 

 

 

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