(1) 東北三省の農村には、過去長期にわたって単一の農業生産構造であって、農村の新しく増加した労働力は殆どその耕地に制約され、労働力資源として十分に利用されなかったのである。農村経済体制改革以来、とくに家族を単位とする請負生産制の実施により、数多くの労働力は農業から非農業産業に移行するようになってきた。それにもかかわらず、農村においては、まだ膨大な余剰労働力が存在しているのが現状である。中国の8省10県農村調査によると、農業の余剰労働力は約40%であるといわれている。1990年東北三省の農村労働力は1,953.3万人、三省労働力全体の43.5%を占めている。三省の耕地面積は2,435.8万ム4)である。もし農業労働力1人当たりの耕地面積12.47ムに対し、農業機械を投入すれば、1,217.9万人の労働力で十分である。そうすると、残り735.7万人が余剰労働力となる。
(2) 都市における失業者の問題も明かである。1990年東北三省の都市の失業者は約90万人であるが、吉林省だけについてみると、1960-70年代に生まれた子供はすべで就業年齢に入っているので、現在、都市の失業者数は20万に達している。しかし、政府は毎年僅かに4万人しか職業の配置ができない。第8次5カ年計画期(1991-95年)において都市の就業年齢に達する人口は110万、進学などを除いて、就業可能人口は年間15-16万人という規模である。
3. 耕地開発と食糧生産の立場で見た中国農業発展の潜在力
中国は人口の最も多い国として、その人口増加と食糧の需給については広く注目されている。特に1996年以来、中国の食糧需給の見通しについて、悲観的予測がいくつかの関係機構によって発表された。もし予測通り中国が穀物の輸入大国に転落すれば、世界の食糧需給のバランスは大きく崩れるであろう。