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まとめ

 

他の国のなかでも、中国は経済開発を支援するために水供給の増加が必要であると主張し、その対策として巨大ダム・分水や管井のプロジェクトを進めている。しかしこのような方策は、まず黄河と河北省の地下水といった辺境地域から終わりを迎えつつある。しかしこれまでのところ、現在の水使用の非持続性は、それほど開発に制限を与えていないようである。

この状況は2通りに解釈できる。1つは、中国の現在の開発方式は徐々に明らかになっている段階で、単に破滅が先延ばしにされている。つまり、21世紀に悲劇が起こるという見方である。もう1つは水を利用する全ての人が水を経済価値、あるものと考え、水資源使用制度を柔軟なものにする。そうすれば悲劇を避けることはできるだろう。このストーリーはある人々にとって悲しいニュースで、ハッピーエンドにもならないが多くの人々にとってないのだ。

 

参考文献

 

(1) 執筆時点では、洪水により中国では3,004人、インドでは2,343人が死亡(1998年8月29日付ジャパン・タイムス:4)、バングラデシュでは370人が死亡(1998年8月28日付インターネット版インデペンデント紙)と報告されている。長江周辺の洪水は3万3,000人が犠牲となった1954年以来の大惨事となり、北東部にある中国最大の大慶油田も洪水に見舞われた。バングラデシュは過去10年来で最悪の洪水である。

(2) この見解のもっとも極端な例は、Karl August Wittfogelの「東洋の専制政治」 (Oriental despotism)である。これほど過激でない広く受け入れられている見解は、灌漑と治水に基づいた「アジア的な生産方式」で、これはおそらく国内での産業革命の進展を阻害する要因となっていると考えられる、官僚国家の未成熟な発展につながっている。参考として、Mark Elvinらの「中国の水資源管理の歴史についての日本による研究」(Japanese  Studies on the History of Water Control in China)キャンベラ:最新研究所、ANU、1994年を参照されたい。

 

 

 

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