水不足は工業生産に年間2,300億元(4.1兆円)の「影響」を与えているといわれている。これは総生産量のおよそ2%にあたるが、国営企業に限っていえばこの数字は5%にもなる。この種の数字が開発阻害の程度を測るために経済的に意味のあるものであるかどうかは不明だが、天津、太原、北京といった、もっとも影響を受けている都市でも、ここのところ工業生産は急成長を続けている。工業生産の「ロス」は、成長の絶対的な制限ではなく、より安定した水供給により得られる可能性のある利益と、貯蔵の改良と水節約の設備への投資によって測られる。
多くの場合、開発の制約となっているのは水よりも資金面である。この制限は、公共の水供給と下水施設に十分なコスト回収が望めないことによって、さらに厳しくなっている。中国政府は昨年末に『水利産業の政策』を発表して、『経済』プロジェクトの独立企業に真剣に取り組んでいるようである。灌漑プロジェクトは『経済』プロジェクトではないため、この新政策は都市部と産業における水供給投資の開発を優先するものになりそうである。
実際、慢性的な水不足に対する多くの都市の対応は隣の水資源の利用であり、この水資源は都市が使用しなければ近隣の農家が灌漑に利用するものである。北京と瀋陽では、これはダムから地表水を輸送することを意味する。その他の多くの都市、特に河北省の南部では、都市の水使用者は、数千キロ平方メートルを超える『円錐凹地』を現れ、今までにない深さから地下水を引く井戸に頼っている。衡水と滄州の市では特にひどい状況で、山東省の徳川市でも、地下50メートルを超える帯水層から水を引き上げているため、天然のフッ素含有量が多く、長期にわたって飲み続けた場合の健康への影響が懸念される。(11)
地下水面の低下は、井戸に依存しなければならない近隣の農民に、汲み上げ費用の増大をもたらしている。しかし最近、河北では灌漑面積と穀物の生産が増加している。