Kendall and Pimentel(1994)は、2050年の食糧シナリオとして表5を提示している。耕地面積の拡大はかなり困難で、楽観的シナリオでも現状より20%増反できるにすぎない。常識的シナリオでは逆に12%減反している。上記のシナリオに基づいて、耕地の水需要量を推算すると下のようになる。それゆえ、来世紀半ばの食糧を確保するには、穀類生産用の耕地の現在の水需要量(400ミリ/ha)の1.3倍(悲観的シナリオ)から1.7倍(常識的シナリオ)の水資源が必要である。
悲観的シナリオ : 3兆6000億トン
常識的シナリオ : 4兆2000
楽観的シナリオ : 4兆8000
しかし、増大する世界人口と生活水準の上昇、そして世界気候の人為的温暖化の進行を考えると、つぎのようなことが予想され、農用水資源の確保はきわめて困難になるだろう。
1] 温暖化に伴う降水状態の変動性の増大(シャワー型の降雨の増加、無降水期間の長期化、降水の利用率の低下など)
2] 温暖化に伴う地面・植被面からの水分蒸発の増大
3] 表層土壌の急激な乾燥化
3] 生活用水・工業用水需要の増大(とくに発展途上国で)
一方、CO2濃度の上昇は作物の蒸散水効率(W/T,W:乾物生産量;T:蒸散量)の改善をもたらすので、耕地の群落水需要量は上で使用した値より小さくなることも予想される。