C3作物群内では根粒菌を寄生させるマメ科植物では効率が約15%低くなっている。
上表値を用いると、乾物1tを生産するに要する蒸散量は次のようになる。
C4作物: 315t ; C3イネ科作物 : 599t
C3マメ科作物: 694t ; C3その他作物 : 570t
いま、裁培期間での地面蒸発を蒸発散量の0.2とおき、(6)式を利用すると、乾物1tを生産するに要する耕地の水需要量は、上の値の1.25倍になる。
自然植生の大部分はC3植物群であることを考え、群落水需要量を600t/t乾物と仮定すると、さきに説明した各生産量の生産に消費する水資源量は次のように評価できる。この必要水資源のすべては、陸地上への降水によって補給されている。
ポテンシャル純一次生産量: 81兆6000億t/年
実純一次生産量: 48兆9600
食料と材木の収穫量: 7兆3200
収穫量確保に要する生産量: 12兆2400
いま、地球上の陸地の水バランスを示すと表4のようになる。上の数値と表4から、地球上で人類活動が無い条件では、陸地の大部分が自然植生に覆われており、植生は陸地上の年間降水量の約69%を乾物生産のために使用していたと思われる。この使用割合は、現在の蒸発散割合(58%)より10%大きい。実純一次生産には陸地降水量の41%が使用されており、表4の蒸発散量推定値より約20兆トン少ない。これは裸地域から表面流去と蒸発放出が多くなっていることを反映している。
1991年の資料によると、約18.7億トンの穀類生産のために7.04億ha(内1.13億haは灌漑あり)の耕地を使用している。いま、収穫係数の総平均値を0.4と仮定すると、18.7億トンの穀類生産には次の乾物量を生産しなければならない。
総乾物生産量=2.5×18.7=46.75億トン
さきに説明した群落水需要(600t水/t乾物)を用いていると2兆8050億トンの水資源を使用していることになる。これは各作物の栽培期間に約400ミリの水資源が必要なことを意味している。この水は栽培期間中の降水と他流域からの導水によって補われるが、上に示したように灌漑耕地は穀類生産用耕地の16%にすぎない。