日本財団 図書館


4. おわりに

 

地球環境は、人類を含む全生物群にとって次の四つの働き(機能)を果たしている(内嶋、1990)。

1] 生存活動を営み、次世代を育てる

2] 生存に必要なエネルギー・物質を生産し貯蔵する

3] エネルギー・物質および老廃物を運搬する

4] 遺体・老廃物を分解・処理し再利用に備える

この四大機能を地球環境に与えているのは、太陽から入射し続ける太陽エネルギーであり、莫大な量の水の存在であり、そして約40億年の進化の歴史をもつ生物(とくに植物群)の働きである。

しかし、いま地球は一つの生物種―人類の異常な増殖と活動という脅威にさらされている。それは優れた大脳の働きによって開発された『地球資源化技術』によってもたらされている。これは地球のすべて(空間・現象・物質・生物)を、自らの豊かな生活のための資源としか考えず、利用しつくす文明体系であり実践である。すでに上に述べたように、水の惑星―地球は40億年の進化の歴史をもつ全生物群の唯一の安全な生息場所であり、そのための様々な資源が準備されている星である。

それゆえ、近未来における地球環境と水資源・食料生産との関係を考えるにあたって、最も大切なことはこの有限の地球上で人類と40億年の進化史の重味をもつ多くの生物群とが、いかにして持続的共生を図るかという課題である。人類の肥大する物質欲望の大胆な抑制なしには、この課題を解決し水の惑星―地球上で人類と他生物群との持続的共生を確立することは困難であろう。

 

引用・参考文献

 

Arkley, R.J. (1982) Transpiration and productivity. In: Handbook of agricultural productivity (ed. by Rechcigl, Jr. M.) pp. 209-211, CRC Press.

Budyko, M. I. (1978) The heat balance of the Earth. In: Climatic change (ed. by Gribbin J.), Cambridge Univ. Press, pp. 85-113.

Kendall, H. W., and D. Pimentel(1994)Constraints on the expansion of the global food supply. Ambio, 23, pp. 198-205.

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION