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NPP=[0.29exp(-0.216RDI2)]Rn (4)

ここでRDI(=Rn/lr)は気候乾燥度を示す放射乾燥度、Rnとrは年間純放射量(kcal)と年間雨量(cm)、lは水の蒸発潜熱(kcal/gH2O)。上式はRDIの増加(乾燥化)につれて、放射エネルギー乾物生産量への変換効率が急減することを示している。また、一定のRDI値では乾物生産量が純放射量に比例して増すことを示している。

(4)式を用いて気候要素(RDI,Rn)を変数としてNPP値および植生タイプを示すグラフモデルを作成すると図3のようになる。図にみられるように、RDI<1.5域の多湿気候帯では、低いRnでの針葉樹林から高いRnでの熱帝雨林まで森林帯が連なり、純一次生産力も約5トンから25〜30トン/(ha・年)まで増大している。一方、RDI>1.5の乾燥気候域では植物への水分供給が急減するので、純一次生産力も急減し、植生タイプも森林草原・草原そして半砂漠―砂漠へと変化してくる。純一次生産力も5トン以下へと急減し、RDI>3.0域では1トン/(ha・年)以下となり生物学的には辺境である。

現在の気候条件下での148.98億haの陸地のもつ植物生産量を評価するために、自然植生の純一次生産力(NPP)の地理的分布を求め図4に示した。図にみられるように、温度環境・水分供給・日射エネルギー組み合わせを反映して、NPPは極北地帯・ツンドラ帯そして亜熱帯高圧帯での1.0t/(ha・年)以下から赤道帯にある熱帯雨林地での25〜30t/(ha・年)まで広い範囲に変化している。図中の陰影域は10t以上の高生産地帯を示している。広大な地球の陸地上で高生産地帯が意外に狭いことが分かる。

これを定量化するため、各NPP値域ごとの面積頻度分布曲線を作成した(表2参照)

10t/(ha・年)以上の高生産地は全陸地(148.89億ha)の36.1%にすぎない。とくに25t/(ha・年)以上の亜熱帯・熱帯雨林は、わずか3.5%にすぎない。一方、1t/(ha・年)以下の生物学的辺地は22.5%もある。このことは、現在の地球上での温度資源・水資源・太陽エネルギー源の組合せ、したがって地球上での大陸と海洋の地理的分布が植物生産にとって、あまり好適でないことを示している。来世紀に予想される人為的な地球温暖化が、図4および表2の結果にどのような変化をもたらすかは、人類だけでなく地球上に生きる全生物の生存にとって極めて重要な関係をもっている。

 

 

 

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