図4と表2を利用すると、現気候下での陸上植生の最大乾物生産量(ポテンシャル純一次生産量、t/年)を評価できる。その結果が、人類による土地利用を考慮した場合の乾物生産量(実純一次生産量)および人類による植物生産利用量と一緒に下に示されている(内嶋、1997)。
ポンテンシャル純一次生産量 :1360億トン/年
実純一次生産量 : 816
食料と木材収穫量 : 122
食料・木材収穫に要する生産量 : 204
耕地・居住地・工場用地・交通用地の造成・確保のために、自然植生地は次々と破壊されている。このため、実純一次生産量はポテンシャル純一次生産量の60%に低下している。この中から、人類は生存と生活のために122億トン(実一次生産量の15%)を収穫し利用している。上表の最後の数字は、収穫係数(=収穫物量/全作物体量)を下のように仮定して求めた値である。
栽培作物=0.3、木材生産=0.5
牧野作物=0.8。
収穫係数を導入すると、人類が自らのためだけに収穫利用する植物量は、実純一次生産量の25%にも達する。
すでに説明したように、植物群の生産する植物量は地球上に生存する全生物の生存の基である。それゆえ、上記の数値は一つの生物種―人類が陸上植生群の純一次生産量の25%を独占的に利用していることを示している。21世紀半ばには世界人口が100億人に近いことを考えると、単純な算術でも人類の利用する植物生産量が全体の50%を越えることは明らかである。これは自然植生とくに各種森林群が次の役者を担って多くの野生生物群の生存を支えていることを考えると、現存進行中の植物生産量の人類の独占的利用は、近い未来において野生生物程の広般で急激な減少、すなわち生物種の人為的な集団絶滅を招く危険性を持っていると結論できる。