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2) 気候を緩和する水の働き

水は下のような特別に大きい比熱と蒸発潜熱をもっている。それゆえ、水は暖まりにくく、また冷えにくい。水が相変化(液体⇔気体)する時には莫大な熱エネルギーが関与するので、水蒸気の形成・移流・凝結によってエネルギーの移動が活発に行われる。

水の比熱   : 4,218JK-1kg-1=1.0cal/(℃・g)

水の蒸発潜熱 : 2.5×106Jkg-1=597cal/g(0℃で)

このような水の特別な物理的性質によって、地球上の気候は大幅に緩和され、生物生存に好適な気候域が広く地球上に形成されている。

その様子を明示するために、つぎに地球のエネルギー収支を簡単に説明する。地球全体として年間エネルギー収支を表わすと図1のようになる。いま、地球の惑星アルベド(=太陽エネルギー反射率)を0.3とおくと、惑星地球と地球表面の単位面積が吸収する年間太陽エネルギー量は下のようになる。

惑星地球吸収量(Qsa)=179kcal

地球表面吸収量(Qa)=118kcal

その差61kcalは地球大気に吸収されたエネルギー量である。地球表面吸収のすべてが地表近くの気象現象に使用されるわけではない。その一部は地表から赤外放射(I)として大気中へ放出されている。このIを差し引いたエネルギー量が地表近くの気象現象のエネルギー源、すなわち純(正味)放射量(Rn)である。それは下のように表わされる。

Rn=Qa-I=118-39=79kcal (1)

この79 kcalの純放射量はつぎのように配分されている。すなわち、地球表面に与えられた年間純放射量の83.5%は水の惑星表面から水を蒸発させるのに、残り16.5%は太陽熱で暖まった地球表面からより低温の大気への伝熱に配分されている。

水の蒸発(lE) =66kcal

大気への放熱(P)=13kcal

 

 

 

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